「フォレスト・タッカーは、とても興味深い人物だ。複雑な性格で、危険だらけの人生を歩んだ一方で、それを楽しんでいた。このキャラクターは私が演じる役にぴったりだと確信した。強盗でありながら、誰も死に至らしめないというフォレストのアプローチからは、生きるための掟について多くを学んだ」
Photo by Eric Zachanowich. (c) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
本人自らがこう語るように、21歳から俳優人生を歩み出したレッドフォードも、とことんこの仕事を楽しんできたに違いない。そして、俳優だけでなく、監督や映画祭の主催など、周囲も巻き込みながら「映画」という仕事に身を捧げてきた自分の姿を、フォレスト・タッカーの中にも見出していたのだ。いわば彼の人生哲学が作品には反映されているといってもよい。
映画の世界でのキャリアを決定的なものにした「明日に向って撃て!」と同じ銀行強盗の役を、俳優引退作品である「さらば愛しきアウトロー」でも演じたのは、単なる偶然ではもちろんないだろう。レッドフォードは、自分を重ね合わせることのできる銀行強盗の役を得て、スクリーンいっぱいに魅力を放っている。
現実のフォレスト・タッカーは、1999年に起こした強盗の罪で、13年の刑を受け、2004年に獄中で83歳の生涯を終えている。実は、映画での結末は少々異なり、意味深なものとなっている。それを見ると、ロバート・レッドフォードにはまだまだ俳優を続けて欲しいと思う。「さらば愛しきアウトロー」はそんな気持ちにさせる、心優しき悪漢への素敵な賛歌ともなっている。
連載 : シネマ未来鏡
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