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2019.07.19

何気なく始めた趣味が人生の夢に 「チーズケーキで世界を変える」田村浩二の挑戦

Mr.CHEESECAKEの田村浩二


そのときに結局、人は誰が料理をつくっているかよりも、その人に何が乗っているかしか見ないんだな、と思ったんです。それまではシェフとして「有名になりたい」感覚が強かったんですけど、それ以降は考えが変わって。料理の良し悪し以外の判断基準の方が重要視されるのであれば、誰が食べても美味しくて、分かりやすいものを作ろう。それが新しい価値になる、と思ったんですよね。それで作り始めたのがチーズケーキです。

自分のお金で自分のお店を持つ。そのイメージが持てなかった

チーズケーキは自分が小さい頃からずっと好きで、強い思い入れがありました。もともと自分は「パティシエになりたい」という思いで、飲食業界に入っているくらいです。それと、世の中で販売されているチーズケーキはなかなか自分の好みに合わなかったので、それならば……と思い、とりあえず作ってみることにしたんです。



料理を始めた頃から、ずっと趣味でチーズケーキは作ってきたのですが、本気で作ったら自信を持って「美味しい」と思えるものができて。それをインスタグラムのストーリーズにアップしてみたら、レストランのお客様から「食べたいんだけど、どうしたらいい?」とコメントをいただいたので、最初は6人くらいに販売してみたんです。

購入してくれた女性の1人が、食べた感想をブログとインスタグラムに投稿してくれて。それがきっかけで、20代の女性を中心にチーズケーキがSNSで拡散されていき、広く知られるようになっていきました。

最初は本格的に販売する予定はなかったのですが、何となく売れるようになったときのことは考えていて。チーズケーキを作るオペレーションも考えていたんです。それが自分の想像よりも早く、そしていろいろなものが動いたので、事業として形にしたいと思いました。そして、その決断は自分が「シェフを辞める」ことにしたのも大きく関係しています。

フレンチシェフと働く中で、いろいろなシェフの話を聞いていたのですが、将来的に自分のお店を開くイメージが持てなくて。10年ほど前は接待など、会社のお金でレストランに行く機会が世間的にあったと思うのですが、自分の世代はレストランに行く機会はどんどん減っている。当時、32歳だったのですが、今後の10年をレストランのオープンに注いでいいのか、と。そんな思いがあったんです。
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文=新國翔大、人物写真=小田駿一

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