AI通信「こんなとこにも人工知能」

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機械学習を使って、牛の腸内細菌と牛乳の品質、メタンガス排出量の関係性を精査した研究結果が公表され、話題を集めている。

昨今、生物学の分野では、腸内細菌が及ぼす人体への影響が注目を浴び、腸内細菌は人間が発症する多くの病気のみならず、心理状態など精神面にまで影響を与えるという研究結果が続々と発表されている。

そんななか、人間だけでなく、牛も腸内細菌による影響を受け、牛乳の味だけでなく、各個体から排出されるメタンガスの量も変化するという研究結果が発表された。研究を行ったのは、英国アバディーン大学、ノッティンガム大学、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学、フィンランド国立資源研究所など、8カ国11の研究機関で構成された国際共同研究チームだ。

研究チームは、英国、イタリア、スウェーデン、フィンランドの4カ国7つの農場で飼育されている1016匹の乳牛から、牛の形質情報と腸内細菌のDNAを収集。機械学習技術で、腸内細菌がどのように個体に作用するかを分析した。

その結果、人間の腸内細菌と同じように、すべての牛がそれぞれ独特の腸内細菌を保持していることが確認された。研究チームはまた、牛が512種類の腸内細菌を共通して持っており、そのうち39種の主要な腸内細菌が牛乳の味とメタンガスの生成に影響を与えることも明らかにした。さらに、それら腸内細菌が牛乳の味とメタンガスの生成に影響する度合いが、遺伝子より強いことも確認している。

研究著者のひとりであるアバディーン大学のJohn Wallace教授は、「腸内細菌が遺伝子より牛乳の品質およびメタンガス排出に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした点で、今回の研究の意義が大きい」とし、乳牛の飼料に特定の腸内細菌を添加すれば、メタンガスを削減しながら高品質な牛乳を作り出すことができるはずだと、研究成果の応用に期待を寄せている。

これまで酪農分野では、良質な飼料や飼育環境が、おいしく栄養価が高い牛乳を生み出すということが常識とされていた。一方で、牛、ヤギ、羊のような反芻動物は、ゲップや放屁を通じて毎年1億t近くのメタンガスを排出するため、学界で“地球温暖化の主犯”だと主張されるケースが増えていた。腸内細菌と各個体の相関関係が分かるようになれば、地球温暖化を防ぎつつ、高品質な牛乳を引き続き生産することが可能になっていくかもしれない。

生物学の分野は、地球規模の課題とされる食糧・環境問題にイノベーションを起こす重要な学問領域だ。今後、人間の認知限界を超える機械学習などAIの主戦場のひとつになるはずである。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河鐘基

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