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2019.07.18 12:00

もう観光客増は目指さない。熱海は「サードプレイスとしてのまち」に進化する


街の使い方も距離感も、もっと自由でいい

その後、市来氏が率いるmachimoriは、宿泊者と街をつなぐゲストハウス「MARUYA」、コワーキングスペース「naedoco」、熱海で開業したい人向けの起業塾など、外部の人々と熱海との接点となる場を提供し続けてきた。


ゲストハウスMARUYAのテラスでは、毎週金曜日に「食を囲むイベント」を開催し、市内外の人たちが交流し賑わいを見せる


そして現在進行中のプロジェクトが、街とほどよい距離感を保ちながら滞在できるゲストハウス第2弾の立ち上げだ。

「サードプレイスですから、熱海の使い方も街との距離感も、もっと自由でいいと思うんですよね。『MARUYA』は例えて言うならスタジアムでスポーツ観戦をするように、みんなで一緒に楽しむイメージでした。一方で、映画館で作品を楽しむように、みんなが同じものを見ているけれど1人で過ごせる場があってもいい。そういう場所にしたいと思っています」

場所は、熱海最後の映画館「ロマンス座」があったビル内。熱海銀座の通りから脇道に入ると、路地裏のペントハウスを思わせる扉が待っている。


ゲストハウスの扉は路地裏に面していて、ディープでレトロな熱海の雰囲気が味わえる

20代から30代をメインターゲットとしている「MARUYA」の客室はカプセルタイプだが、新しいゲストハウスの客室はすべて個室で、カップルや家族での利用もしやすいという。客室は2~4階にあるため、熱海銀座にありながらも賑やかさとは適度に距離をとることができ、部屋からは海を眺めることもできる。メインターゲットは30代から40代だ。

「『MARUYA』を利用する世代だと、まだ年齢的に二拠点居住や移住を考える段階ではないこともあります。東京だけではない暮らしを考えたり、キャリアとして次のステップを考えたりということが現実味を帯びてくる30代以降の人々が、ここで自分と向き合い、何かきっかけを持ち帰ってくれたらいいなと思います」

オープンは今夏の予定。現在、このゲストハウス立ち上げのためにクラウドファンディングで支援を募集している(https://camp-fire.jp/projects/view/178684)。
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文=福田さや香 写真=栗原洋平(市来 広一郎)

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