そう語る吉岡マコは25歳で産後まもなくシングルマザーとなり、産後の心身の辛さとそれをサポートする仕組みがまるでないことに驚いた。
小さなスペースを借り、産後の女性と赤ちゃんが通える「産後のリハビリ」教室を立ち上げたのが21年前。その後、認定NPO法人マドレボニータへと法人化。この「体力」と「言葉」を取り戻す産後ケアのプログラムで救われた女性たちは数えきれない。
たった一人での創業から、グーグル インパクトチャレンジでグランプリの「Women Will賞」に輝き5000万円の助成金を得るなど、内外から評価されるまでになった。そんな吉岡の歩みには、どんなわくわくする瞬間があったのだろうか。そして吉岡が考える、来てほしい未来とは──?
自らの力で道を切り拓く女性たち「セルフメイドウーマン」を紹介する連載企画。7月25日発売のForbes JAPAN9月号でも特集するこの企画で、今回は吉岡マコのわくわくする瞬間を聞いた。
──創業時から持っている信念を教えてください。
創業から20年余り、一貫して変わらないのは、「人は誰もが計り知れぬ力を持っている」という考えです。自らが持つ力を発揮し、人に社会に貢献し、充足感を得ることは、特別な人の特権ではなく、誰もがもつ権利だと思っています。
でも、その力はふとしたきっかけで失われてしまうリスクがあり、誰もが「弱者」になり得ます。
産後はまさにそのような状態。私も経験して驚いたのですが、出産が体に及ぼす影響は非常に大きく、体じゅうの痛みや貧血などさまざまな不調に見舞われます。
とにかく体力を取り戻すということが大事なのですが、それすらままならない人もたくさんいます。体力の低下に加え、アインデンティティの問題もあります。赤ん坊を連れていると、どこへ行っても自身の名前ではなく「お母さん」と呼ばれるようになりますよね。
母親同士の会話も「お子さん何カ月ですか?」など、子どもの話題に終始しがちです。ママトークはできても、一人の人間として会話できる機会がなくなると、自分の言葉を紡ぐことができなくなっていく。
体が元気ではないと、人とコミュニケーションをとることもままならないですよね。ましてや、自分の言葉を失った状態では、例えば、一番話したいはずのパートナーとも、育児や仕事復帰についての話がなかなかできません。
だからこそ、産後の女性が取り戻すべきは、体力と言葉。
この二つがあれば彼女たちは家庭でも社会でも自らの力を発揮できると信じて、その考え方や実践法を世の中に広める活動をしてきました。