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2019.07.18 18:00

ハーブを摘み、生きる喜びと働き方を考えた|フィンランド幸せ哲学 vol.1

ヘルシンキ・ワイルドフーズ社の共同創立者アンニカ・ハンヌス

ヘルシンキ・ワイルドフーズ社の共同創立者アンニカ・ハンヌス

フィンランドと日本の外交関係樹立100周年を迎えた2019年。初夏に首都ヘルシンキを旅する機会を得た。フィンランドは、国連が発表する世界幸福度ランキングで、2年連続で1位を誇る。働きやすく豊かな国というイメージだ。

またフィンランドと言えば、ムーミン。日本でも愛され、ジブリ映画とも通ずる自然への畏敬の念、精神性があるように感じる。この旅を通じて、私たちがこの国から学べる幸せのヒントを探った。5回に分けて紹介したい。

初回は、自然豊かな森でハーブを摘みながら、自然を尊重するフィンランドの人たちの姿に触れ、働き方や豊かさについて考えた。

自由に摘む「権利」がある

ヘルシンキの市街地からバスで西へ30分ほど。現地在住の日本人ガイドの方に連れられて、セウラサーリ島へ向かう。最近、秋篠宮ご夫妻がフィンランドを公式訪問された際に、視察に訪れたことが報じられた島だ。

この島は、全体が国立公園となっていて「オープンエアー・ミュージアム(野外博物館)」として伝統的な建物87棟が点在し、110年の歴史を持つ。家族向けのイベントやガイドツアーなども開かれる。リラックスのために訪れる現地の人も多い。


セウラサーリ島の入り口。橋を渡って森の中へ

私たちを迎えてくれたのは、ヘルシンキ・ワイルドフーズ社の共同創立者アンニカ・ハンヌスさん。森の妖精のような、と言ったら失礼だろうか、そんな佇まいが印象的な女性だ。

ヘルシンキ・ワイルドフーズは、フィンランドの野生の食材の販売や、自然にまつわるホビーやツーリズムを提唱している。新しく「METTÄ(メッタ)」という野草・ハーブのブランドを立ち上げ、実は日本にも進出している。メッタは、フィンランド西部の方言で森を意味するという。

まず、アンニカは「私たちには、森に行ってベリーやハーブを自由に摘んでも良い『権利』があるんです」と教えてくれた。国立公園や私有地などで「希少種はNG」「枝を折るのはダメで、木からも採らない」というルールを守れば、一般的に地面に生えたものを摘んだり、落ちた木の実を拾ったりするのは「大歓迎」だという。

これは、「自然享受権」というフィンランドの特別な権利。国土75%以上を占める広大な森をはじめ、多くの島や湖などに適用される。「次の世代にも楽しんでもらえるように自然を残す」という考えが、フィンランド人にとって共通規範のようだ。

「最近、フィンランドではローカルフードに関心のある人がすごく多いですよ。街から島や山に行って、エクササイズしながら植物に触れる人もたくさんいます」(アンニカ)

とはいえ、日本の山菜採りと同様、毒を含む植物もあるため専門的な知識は必要。私たちもアンニカに教えてもらいながら、ハーブを摘む体験をすることになった。

野生のハーブを摘んで…

最初に摘んだのは、イラクサ(下の写真を参照)。フィンランドでは「NOKKONEN(ノッコネン)」と呼ばれ、100年前から知られる代表的なハーブだ。葉っぱがトゲトゲで特徴的。ほうれん草より鉄分が多く、カルシウムやマグネシウムも含まれ、デトックス効果もあるという。


フィンランドでは「ノッコネン」と呼ばれるイラクサ

煮て乾燥させて、ペストソースのように食べるのが一般的だが、ティーにするのも良いそうだ。葉や茎などすべての部分が使え、種も乾燥して食べることができる。

アンニカは、山肌に生えたイラクサを摘み、葉っぱを私たちに差し出す。長さ5〜6㎝の少し大きめな葉っぱで、一瞬ためらったが、彼女に言われた通りそのまま食べてみると、苦味もなく、ふわっと葉の香りが口のなかに広がった。

こうして、いくつか摘んだばかりのハーブを食べることになった。
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文=督あかり 写真=Aleksi Poutala

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