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フェイスブックとカーネギーメロン大学が開発したAI(人工知能)を活用したボットが、ポーカーの一種である「テキサスホールデム」で、人間の世界チャンピオンらに勝利した。

ポーカーはこれまで、AIの活用が難しい領域とみなされてきた。チェスや囲碁はルールが明確なボードゲームだが、ポーカーでは相手の手が分からず、ブラフのような戦術を用いて感情を操る必要があるためだ。

フェイスブックのAIサイエンティストのNoam Brownと、カーネギーメロン大学教授のTuomas Sandholmは、ポーカー専用のAIボット「Pluribus」を開発し、その成果を7月11日、学術誌Scienceに掲載した。

Pluribusは複数人で対戦するテキサスホールデムを、自己学習メソッドを用いてマスターした。ここでいう自己学習とは、人間がデータのインプットを行わないAIのトレーニング方法を意味する。

BrownとSandholmによると「Pluribusはランダムにプレイを行うことで、どのような手が良い結果をもたらすかを、ゼロから時間をかけて学んでいった」と論文で述べた。この手法はかつて、グーグル傘下のDeepMindが「AlphaGo」に囲碁を学ばせたメソッドと同様のものだ。

AIの研究者らはゲームを実験空間として用い、人工知能の精度の向上に努めている。この分野では近年、コンピューティングパワーの向上やデータセットの整備により、より洗練されたAIテクニックが生まれてきた。テック業界の大手は、AI分野のブレークスルーを、ヘルスケアやサイエンス、エネルギー分野の革新につなげようとしている。

「Pluribusが複数人の対戦ゲームで成果を収められたことは、偉大な前進だ。ゲームにおいては1対1の対戦ゲームが主流だが、現実世界では複数のインプットの処理が重要になる。オンラインオークションや、交通ナビゲーションがその例にあげられる」と研究者らはブログで述べた。

Pluribusは今回、ポーカーの世界チャンピオンのChris Fergusonや、World Poker Tourで最多優勝記録を保持する米国のプロポーカー選手のDarren Eliasらを打ち破った。

カーネギーメロン大学は2017年に開発したポーカー用AIボット「Libratus」で、プロ選手に勝利していた。今回のPluribusはLibratusの進化版で、試合中にオンライン検索により数手先を読む機能や、自己学習アルゴリズムを追加していた。

プロ選手が仕事を奪われる可能性は?

PluribusはLibratusよりも小さなコンピューティング容量で運用可能で、今回はわずか150ドルのクラウドのシステムを用いたという。「AI分野では効率化が進み、AIのトレーニングにかかるリソースの費用を劇的に軽減できている」と研究チームは述べた。

ここで気になるのはPluribusのようなAIボットの普及により、プロのポーカー選手の生活が脅かされてしまうことだ。しかし、その心配はなさそうだ。

「フェイスブックは、このAIをオープンソース化するつもりはない。ポーカーは商業的にプレイされているゲームであり、オープンソース化はコミュニティにネガティブな影響を与える危険があるからだ」とフェイスブックの広報担当のAri Entinはフォーブスの取材に述べた。

編集=上田裕資

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