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2019.07.25

ジェフ・ベゾスを動かした1通のメール |アマゾン ジャパンができるまで 第1回

独占連載:アマゾン ジャパンができるまで


この頃アマゾンはすでに、イギリス、ドイツで国内ナンバー3の書店を買収していた。ジェフ・ベゾスは元来、続いて日本もM&Aする計画だったという。後になってわかることだが、 例の「100万人目の日本人カスタマーへのデリバリー」というあの派手なパフォーマンスの裏で、来日したベゾスは買収候補、例えば「ブックサービス(現在は楽天の子会社)」などを訪れていたのだった。

プレゼン後、年収とストックオプションなどの条件が明示されたオファーレターが出たが、3人は不思議なことに、インターナショナル・ディビジョンには入っていなかった。

1998年11月。オファーは白紙撤回


ところがなんと、この時のオファーレターはその後、白紙撤回されてしまったのである。

この頃のアマゾン本体は、書籍のほかに、「ミュージック」だ「DVD」だ「おもちゃ」だ、と「買える商品」の種類を広げていくフェイズに入っていた。つまり、「国」を増やしていく「グローバル・エクスパンジョン」よりも、商品を増やす「プロダクト・エクスパンジョン」を優先すべきだ、という気運が高まっていたのである。今は日本に上陸するタイミングではない、というのが、ジェフ以外の大半の意見だった。

ベゾスが、グローバルもプロダクトも両方やりたいと思っていることは間違いがない。だが、うまく社内を巻き込めずにいるのかもしれない。

2人は愕然とした。
(敬称略)

連載:アマゾン ジャパンができるまで(第2回は7月28日公開)




岡村勝弘◎有限会社トレジャークエスト代表取締役、Apax Globis Partnersベンチャー・キャピタリスト、株式会社グロービスパートナー・ファカルティ。京都大学卒業後、農林水産省、リクルートを経て株式会社Y&Kカンパニーズを起業、代表取締役社長就任。その後株式会社アクセスでiModeの事業開発を行う。米国アマゾン・ドット・コム、インターナショナル・ディレクター、日本進出責任者となる。2000年、オンライン書店ビーケーワン設立。

西野伸一郎◎株式会社富士山マガジンサービス代表取締役社長。明治大学卒業後、NTT法人営業部門にてシステムコンサルタントとして活躍。企業派遣によりニューヨーク大学でMBAを取得し、1998年、株式会社ネットエイジの設立に取締役として参加。米国アマゾン・ドット・コム、インターナショナル・ディレクター、アマゾン ジャパンにはジェネラルマネージャーとして立ち上げから参加。2002年7月に日本初の雑誌定期購読エージェンシー「富士山マガジンサービス」設立。雑誌のオンライン書店/~\Fujisan.co.jpスタート。2015年7月東証マザーズ上場。

文・構成=石井節子

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