実際のところ、アマゾンがこのセールを始めてから5年間、各社はその規模に関わらず、それぞれの形でアマゾンに勝利してきたのかもしれない。
検索リターゲティング・サービスの英キャプティファイ(Captify)のデータによると、アマゾンの検索トラフィック(インデックス)はプライムデー初日の7月15日、2日前から184%増加した。一方、小売大手の米ウォルマートは130%増、ベストバイは競合各社の中で最も高い255%の増加を記録している。
アマゾンと競合する各社は、プライムセールをまねて安売りをするだけでなく、独自のイベントを行っている。そして、それらの取り組みは効果を上げている。前述の各社に加えて電子商取引大手の米イーベイもまた、プライムセール開始からの24時間に検索インデックスが大幅に増加した。
プライムデー初日に関するアドビ・アナリティクスのデータもまた、アマゾンが唯一の勝者ではないことを示唆している。同日、小売業者のサイトへの訪問数は全体的に増加。流通総額の増加分の66%に貢献した。その他27%はコンバージョンの増加、7%は平均注文額の増加によるものだった。
年間売上高が10億ドル(約1080億円)以上の大手の売上高は同日、月曜日の平均売上高と比べて64%増加した(昨年は54%増)。さらに、年間売上高が500万ドル未満の各社もまた、30%の増加を記録した。
プライムデーの売上高は、第4四半期のホリデーシーズン以外では3回しか達したことがない20億ドル以上に達した。
今回の目立った傾向
アドビのデータが示すのは、実店舗を持つ小売業者の優位性だ。特に、オンラインで注文した商品を店舗で受け取る「BOPIS(Buy Online Pickup In Store、ボピス)」の人気が高まっており、セール期間中にはこの形態を選択する利用者がさらに多くなっている。
通常は安価な商品を購入する際にBOPISを選択する利用者が多いものの、プライムデーにはこの購入方法での平均注文額は、その他の時期より12%上昇。115ドルから131ドルとなった。
また、プライムデーに最も大幅な値引きが行われたのは電子製品(-9%)だった。中でもスマートデバイスの値下げが目立った(スマートウォッチが12%、スマートテレビが10%、スマートホーム関連製品が9%値下げされた)。
一方、キャプティファイが音声検索された商品について分析したところ、それぞれの検索において最も多く利用されていたのはアマゾン「エコー」だった。
アマゾンにとっての不安要素
キャプティファイによれば、世界中で行われた約22億件の検索について調査した結果、プライムデー初日には「Canceling Amazon Prime(アマゾン・プライム解約)」の検索数が前日の18倍に増加していたことが分かった(データはPC、音声検索、スマホアプリなど利用された全てのチャネルを通じた検索が対象。グーグルのデータは含めていない)。
キャプティファイ幹部は、「アマゾンがプライムデーを通じたプライム会員の新規登録と維持を目指すのであれば、計画を再考する必要があるかもしれない」と指摘している。「検索結果から見れば、消費者はプライム会員に登録して安い値段で消費を購入し、そのすぐ後に解約している」という。