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2019.07.21

気候変動めぐる飛行機ボイコット運動 航空会社に存続の危機?

Gettyimages

ジェット機が旅客機として使われるようになったのは、1952年のこと。当時、飛行機に乗ることはとても華々しく見られ、豪華なジェット機に乗って世界を飛び回る国際派の富裕層は「ジェット族」と呼ばれた。

ジェット機による旅は、もはやそれほど華やかなことではなくなったかもしれないが、利用者は当時から格段に増えた。2019年には延べ約46億人が旅客機に搭乗し、1兆ドル(約110兆円)規模の旅行業界を支える見通しだ。ただし、欧州で増えている「フライト・シェーマー(飛行機利用を非難する人)」と気候変動の抗議活動がそれを邪魔しなければの話だ。

北欧では、気候変動に懸念を抱き、空の旅を拒否し始める活動家が増えている。化石燃料への投資の引き揚げを宣言した機関投資家は1000人以上に上り、投資回収額は合計で6兆ドル(約650兆円)に到達しているが、空の旅に対する抗議活動はこうした化石燃料反対運動と同じ勢いを得ることができるだろうか?

スウェーデンで始まった「反フライト」運動は拡大し、「flygskam(フライトの恥)」「tågskryt(列車自慢)」といった陰気だが印象的なスローガンは多くの言語に翻訳されている。以前は旅行を愛していたが現在では飛行機利用をボイコットするある英国人弁護士はロイター通信に対し「良薬口に苦しだが、気候変動を取り巻く問題を考えると、こうした犠牲は小さなことであることがすぐに分かる」と述べている。

女優のエマ・トンプソンは「私たちは皆、飛行機利用を減らすべき。地球の未来が懸かっている」と述べた。しかし、トンプソンはその数日後、ロンドン発ニューヨーク行きのブリティッシュ・エアウェイズ便に搭乗し、飛行機利用を減らすことがいかに難しいかが示された。トンプソンが利用したファーストクラスは、乗客1人につき2トンの二酸化炭素を生んでいるとされる。

飛行機での旅は現在、世界の炭素排出量の3%近くを占めると考えられている。このまま進めば、炭素排出量は乗客の増加とともに増え続け、延べ約82億人が飛行機で旅をするようになる2036年にかけて年間3.5%増えると考えられている。

反フライト運動は、欧州から米国に飛び火したようだ。米議員らが出した「グリーン・ニューディール」決議案では、空の旅が必要なくなるよう米国に高速鉄道を建設するよう呼び掛けている。

決議案は否決されたものの、民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員ら数十人の議員が共同で署名した。この問題は2020年の米選挙で重要な争点ものとなるだろう。
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編集=遠藤宗生

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