航空業界の反応は今のところ不明確だ。先日行われた国際航空運送協会(IATA)の第75回年次総会で、アレクサンドル・ド・ジュニアック事務局長は炭素排出量を減らすためのIATAの「世界的取り組み」開始に関する記者会見を開いた際、記者らに向かって「私たちを汚染者と呼ぶのはやめてください」と発言した。
航空業界にとって、少なくとも近い将来に炭素排出量を削減しつつ成長を続ける方法は限られている。私はここ数カ月で、3つのeVTOL(電動垂直離着陸機)無飛行模型の発表会に出席したが、バッテリー式、ガス・電気のハイブリッド、そして水素燃料を利用した動力装置は、軽ヘリコプター型航空機、ましてやエアバスA380型の代替機を飛ばせるようになるにはまだ程遠い状態だ。
大きなジェット機を動かし、炭素排出量を減らせる可能性があるのは、いわゆるバイオ燃料だ。しかし、バイオ燃料は現在、利用が非常に困難であり、航空会社は化石燃料を使い続けるしかない状況だ。それでもIATAは2025年までに持続可能な燃料を2%とすることを目標とし、それまでに新たな代替燃料源が利用可能となることが期待されている。
では、残る選択肢は何なのか? 一部の航空会社は、乗客が追加料金を支払うことで自分が出した炭素の量を「オフセット(相殺)」する選択肢を用意するなどの解決策を提供している。しかし想像できるように、こうした取り組みは乗客の間であまり人気ではない。最近開催されたIATAの会議でも、出席した航空会社役員のうち、ソウル行きチケットでオフセットを追加購入した人はごく少数だった。
北欧の航空会社SASはつい最近、2030年までに炭素排出量を対2005年で25%削減する計画の一環として、機内での免税品販売を廃止すると発表した。飛行機の重量を減らし、燃料と炭素排出量を削減することが狙いだ。どれほどの重さが節約できるかは明らかにされていないものの、きっと乗客1人分にも相当しないことだろう。
航空産業が繁栄を続けるためには、2つの方法を追求しなければならない。1つ目はもちろん、代替燃料から代替動力装置まで、炭素排出量を削減するためのあらゆる技術的ソリューションを模索すること。2つ目は、懐疑心が高まる世論に対し、航空産業は気候変動対策で可能なことを全て実行しており、計測可能で重要な進捗を遂げているのだと納得してもらうことだ。
そうでなければ、巨大な市場規模を持つ航空業界は、気候変動をめぐり激しさを増す抗議活動の格好のターゲットになってしまう。