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2019.07.18

フォーエバー21創業者の資産が激減、無謀な拡大戦略のツケか

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店舗数を積極的に増やしてきた米ファストファッションのフォーエバー21が、販売不振に悩まされている。ショッピングモールの来店客数が減少していることに加え、10代の若者たちは競合他社に目を向けるようになっている。

一時は高い人気を誇った同社は現在、ザラやH&Mをはじめとするその他のファストファッション・ブランドや、エイソス(Asos)やファッション・ノバ(Fashion Nova)といったオンライン販売だけを行う各社に顧客を奪われている。

非公開企業のフォーエバー21は業績を発表しないが、ある業界アナリストによれば、昨年の売上高は前年比で20~25%減少したとみられる。また、米ブルームバーグとウォール・ストリート・ジャーナルは6月、同社は破産保護の申請を検討している可能性もあると報じた。企業再構築が専門の顧問を指名したほか、各店舗の賃貸契約の条件に関する再交渉も検討中だとされる。

「ビリオネア」の地位から脱落

こうした状況を受け、フォーエバー21の共同創業者であるドン・チャン最高経営責任者(CEO)と妻ジン・スク・チャンの資産は大幅に減少。それぞれ「ビリオネア(保有資産10億ドル以上)」の地位を失った。

夫妻の保有資産は、2人合わせて約16億ドル(約1730億円)となっている。フォーブスが今年3月に発表した「世界長者番付」ではおよそ30億ドル、最も多かった2015年には約59億ドルとされていた。

夫妻は追加融資による事業のテコ入れを目指しているとされる。また、今年2月には地方紙ロサンゼルス・ビジネス・ジャーナルが、同社は1億6600万ドルで本社ビルを売却したと報じた。同社は2017年にも、JPモルガンチェースから5億ドルの融資を受けている。

店舗網拡大は増益に直結?

ドン・チャンは2014年、3年後までに店舗数を倍増させ、およそ1200にするという計画を明らかにした。店の数を増やせば必然的に、売上高も利益も増えると考えたのだという。

また、夫妻はフォーエバー21の店舗を家族全員で一緒に買い物ができる新しいデパートにすることを目指していた。だが、顧客層の拡大は容易ではなかった。小売業界の情報を提供する「ロビン・リポート(The Robin Report)」の創業者ロビン・ルイスは、「全ての人のために全てのものを提供しようとすれば、結局は誰にも何も提供できなくなる」と指摘している。
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編集=木内涼子

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