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2019.07.18

旅先の「体験」を売る、香港のユニコーン「Klook」の成長戦略

Klookの共同創業者3人。左からCOOのEric Gnock Fah、CEOのEthan Lin、CTOのBernie Xiong。

2013年にネパールを旅したEric Gnock Fahは、現地ではほとんどクレジットカードが使えないことに閉口した。友人たちとパラグライダーのツアーに申し込んだが、支払いは現金のみのため、大量のキャッシュを持ち運ぶ必要があった。

その時の経験が、香港の投資銀行に勤務中だったGnock Fahらに起業を決意させた。旅先のアクティビティをウェブ経由で予約し、事前に支払い可能にするというビジネスモデルだ。その後、リンクトインでソフトウェアエンジニアを探し、2014年にアクティビティ特化型の旅行サービス「Klook(クルック)」を立ち上げた。

現在32歳のGnock Fahは2017年のフォーブスの「30アンダー30」のアジア部門にも選出された。

Klookは現在、世界20カ所で1000人以上を雇用している。同社はゴールドマン・サックスやMatrix Partners、セコイア・キャピタル・チャイナ等から累計5億2100万ドル(約562億円)を調達した。さらに、今年4月にはソフトバンク・ビジョン・ファンドの主導で2億2500万ドルを調達し、企業価値は10億ドルを突破した。

Klookの社名の由来は「keep looking」の短縮形だ。同社は旅行関連サイトでありながら、航空券や宿の手配は行わず、旅先のアクティビティやツアー、現地での移動やアトラクションのチケットの販売に特化している。

ニューヨークの旅行関連の調査企業Phocuswrightは、旅先のアクティビティ予約市場の規模が、2016年の1350億ドルから、2020年には1830億ドルに拡大すると予測している。

Klookのサイトは月間の訪問者が3000万人に達し、世界300都市で10万件以上のアクティビティを提供中だ。同社は2015年3月にモバイルアプリを立ち上げ、アジア地域の14カ国のアップルのアップストアでお薦めアプリに選出された。

同社の初期出資者のMatrix Partners Chinaのプレジデントを務めるZhuyan Liは、すぐに出資の話を持ちかけたという。バイドゥのプロダクトマネージャーを務めたLiは、Klookがグローバルにアピール可能なサービスであることを見抜いた。

「Klookは中国の美団(Meituan)の国際版になれると確信した」とLiは述べている。

音楽イベントのチケットも販売

Klookは欧州では既にアムステルダムやバルセロナ、ロンドンに拠点を構えている。現地ではベルリン本拠の競合、GetYourGuideが今年5月にソフトバンクの主導で5億ドルを調達したが、Klookはレンタカーや空港への送迎などの多様なサービスで、顧客を取り込む戦略だ。一方でKlookにとって最大の市場は中国であり、アプリの利用者の35%が中国人となっている。

昨年12月には、シャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツと提携を結び、バンコクや香港、シンガポールでデジタルコンシェルジュサービスの提供を開始した。同社は今後、コンサートやイベントのチケットの取り扱いを増やし、レジャー分野のオファーを拡大する。

「サービスを開始してから1年ほどで、未来の旅行はこれまでの旅の概念に収まらないものになると確信した。旅先の娯楽や思い出づくりができるプラットフォームとして、事業を拡大したい」とGnock Fahは話した。

編集=上田裕資

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