ビジネス

2019.07.16

毎週末の釣りで味わう、見えない世界を想像する楽しみ

キャロットカンパニー社長 吉田剛

日本を含む19カ国で年間約500万個を売り上げる、大阪発のバッグブランド「anello」。企画・製造・販売を手がけるキャロットカンパニー社長の吉田剛に、趣味の釣りや調理の魅力を聞いた。


1988年、雑貨卸として創業したのち、メーカーへと舵を切り、ペンケースやポーチ、バッグを取り扱うように。2004年には自社ブランドを立ち上げ、そのうちのひとつ「anello」が14年に発売した上部ががま口のようにガバッと開く「口金リュック」は、子育て中の若いお母さんから多大な支持を得ることができました。同時期、香港の人気ブロガーの方がSNSで発信したことでアジアにも火がつき、おかげさまで現在は世界19カ国で販売しております。

17年秋にはブランドの世界観をよりよく打ち出すため大阪・心斎橋に直営1号店をオープンし、同年、売り上げ100億円を突破いたしました。「100億円」は、まだ従業員が数人だったころから目指していた数字です。ただし、一挙ではなく少しずつ、それこそ自分の代で達成できなくてもいいと思っていました。実際に30年かかっていますしね。

商いは飽きないから続く、と申しますが、30余年の商いと同じく飽きずに続けているのが釣りです。それこそ海が荒れておらず、家内も荒れていなかったら(笑)、毎週土日は必ず出ます。38歳の時に船舶免許も取得しました。釣り船だと「潮が悪い」とか船頭さんの考えで行き先が決まってしまうので、自前の船があれば好きなところに行けるし、よく釣れるんじゃないかという単純な発想で。でも、いざ船をもってみたら、さらに釣れなくなっちゃったんですけどね(笑)。

当初は大阪湾あたりまで、いまでは南紀の沖合でカジキマグロを釣ったり、GWのような長い休みはトカラ列島や屋久島のあたりまでマグロを追いかけたりしています。釣りの魅力ですか? ……仕掛けが海の中に入っていって、魚が寄ってきているんじゃないかという、見えない世界に対して想像を巡らせる楽しみというのかな。

釣り竿に魚がかかったときのズシッとした重みも格別ですね。調理もします。「釣りをしてもいいけれど、魚は触らないから」と家内に言われていたので、近所の居酒屋や寿司屋の親父さんに魚の捌き方を教えてもらいました。娘には「買うほうが安い」と揶揄されますが(笑)、釣りも調理もすごく集中する。仕事の集中とはまた違って、それがとてもいい時間なんです。

あとは趣味ではないですが、ものづくりには「いま」の空気を知ることが必須なので、街をよく歩きます。地元なら梅田や心斎橋、東京に来たときは新宿、渋谷、代官山などを。時間ごとの人の流れや、路地ごとの出店や閉店などを確認し、新しい店に入れば回転率や利益率、パート代まで、頭でそろばんを弾いてしまう。商売人の性ですね。

僕のイメージでは、世界は小さくなってきているなと。心斎橋の直営1号店は、オープン直後こそ台湾、香港、韓国、タイなどアジアの方が主流でしたが、最近はヨーロッパやアフリカの方々も来られます。「anello」というのも、イタリア語で「年輪」という意味。それぞれの国の商習慣は考える必要がありますが、世界が小さいという実感を好機と捉え、さらなる年輪を重ねていけたらと思っています。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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