「英語の発音をネイティブに近づけてくれるアプリ」創業者の思い

Elsa共同創業者兼CEO Vu Van

今年3月、グーグルのAIファンド「グラディエント・ベンチャーズ」がアジアで初めて投資したのが、ベトナム出身のヴ・ヴァンが開発したエルサだ。エルサは英語の発音学習アプリで、700万ドルのシリーズAラウンドをグラディエント・ベンチャーズがリードした。これまでに1200万ドル(約13億円)を調達している。

2015年にポルトガル出身のCTOとエルサを設立したヴ・ヴァンは、自身がアメリカで英語の発音に苦労した経験からエルサをつくろうと思い立った。ユーザー数200万人を超えるベトナムを筆頭に、いまや100カ国以上で使われているアプリにまで成長した。

自らの力で道を切り拓く女性たち「SELF MADE WOMEN100」を紹介する連載企画。7月25日発売のForbes JAPAN9月号でも特集するこの企画で、今回はエルサのCEO、ヴ・ヴァンに話を聞いた。

──エルサの開発には、ご自身が英語の発音で悩んだ経験があると聞きました。

私はベトナムで生まれ育ち、長年ベトナムの学校で英語を勉強してきましたが、2009年にMBAをとるために米スタンフォード大学に来て、自分は英語を分かっていても、話せないことに気がつきました。

読み書きは得意で、文法もよく知っていましたが、スピーキングは話が全然違う。話してもなかなか理解してもらえず、何度も聞き返されて恥ずかしい思いをしました。自信がなくなってもう英語を話したくないとも思いました。

そこで何か解決策がないかと探しましたが、当時、スピーキングに特化したサービスはとても少なかったんです。まず、自分の発音は間違っているのかどうか特定し、間違っていれば直し方を教えてもらわないといけないのですが、間違っているかどうかもわからない。アメリカに来たばかりの時は、自分が正しく話せていないことにも気づいていませんでした。

ベストの解決策は発音の専門家を雇うことですが、とても高額でなかなか手が出ない。そこで、テクノロジーを使って専門家を提供し、人々がより安価で簡単にアクセスできるサービスを作りたいと思いました。iPhoneのSiri のような音声認識技術を使って、人々の正しい発音を助けるのがエルサです。


エルサのアプリ。発した音声をAIが採点、正しくなるまで繰り返し練習できる。

──エルサはAIを使った高度な音声認識技術が使われています。

アクセサビリティを重視していたので、どうやって多くの人が使えるサービスにできるかを考えました。世界には15億人もの英語学習者がいます。人間の専門家に頼っていては15億人にソリューションを届けられません。

iPhoneのSiriは人々の声を認識しますが、それを先生のように使って発音を直せないかと考えました。そこで、Siriのような優れた音声認識技術を使ったAIをつくり、世界中の人々に英語を教えようと思いました。それができれば世界に大きなインパクトを与えられると思いました。
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構成=成相通子

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