世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


──起業するにあたって、あなたの原動力になったパッションはどのようなものですか。

私のパッションは教育です。教育は人々にチャンスを与え、人生を変えることができます。平等な機会とアクセスを与えることはとても重要です。エルサでも、誰もがアクセスできるようにしたいと考えました。

英語をうまく話せないからといって、うまく話せる人と同じ機会が与えられないのは、不平等だと思うからです。自信を持って英語でコミュニケーションがとれれば教育でも就職でも有利です。ネイティブ・スピーカーではないアクセントがあっても人々が理解できればいいんです。自信を持ってよどみなく話せるようになれば、人生の新しいチャンスもめぐってきます。

──大学院を卒業後、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)で働いていましたが、会社を辞めて起業家になるのに不安はありましたか。

起業家はとてもチャレンジングです。発音に困った時、解決策を一生懸命を探しましたが、ほとんど見つかりませんでした。大学院を卒業してから数年経ったあとも、この問題に取り組んでいる人はほとんどいませんでした。私はこれは重要な問題だと思っていたので、自分がやらないといけないと思ったんです。起業家になろうと決心した、というよりは、自分が最もパッションを捧げたいことを考えてみた時に、なるしかないと思ったからです。

大学院の友人の多くは起業していて、彼らが私のロールモデルになりました。会社を辞めて起業家になるのはとても怖かったです。95%のスタートアップは失敗し、成功するのは5%程度だと言われています。道のりは極端に長くて困難です。特に女性は少ない。でも同級生を見ていると、自分だってできるという気持ちになりました。クリアなビジョンがあれば、そこまで難しくはありません。

──AIの専門家である共同創業者を見つけるのは大変だったと聞きました。

エルサを作るためには、音声認識技術の高い専門性が必要でした。AIの専門家、しかも音声認識技術に明るい人はそもそも人数が少なく、雇うのは困難を極めました。その多くは巨大テック企業で高額な給与をもらって働いています。私は知り合い全員に声をかけて、AIコミュニティにつなげてくれと頼みました。共同創業者が見つかるまでに6 カ月かかりました。世界中をまわって、たくさんの人に会いました。

現在の共同創業者には、ドイツのAIの音声認識技術に関するカンファレンスで出会いました。彼はポルトガル出身で、ポルトガルのチームを率いています。私のビジョンを説明したら彼はとても共感してくれて、今でもうまくいっていますね。

──ご自身の将来のビジョンを教えてください。

いま、人々の間には国によって大きな格差があります。どこに生まれて育ったのかで与えられるチャンスが大きく異なります。私が次の世代に願うのは、新しいテクノロジーやイノベーションによって、格差が少しでも埋まってほしいということです。世界中の誰もが平等な機会を与えられ、同じテクノロジーやイノベーションにアクセスできる未来です。すぐに実現するとは思いませんが、10年後、15年後でもいい。そんな未来を実現したいです。


ヴ・ヴァン◎エルサ共同創業者兼CEO。ベトナム出身。大学卒業後、デンマークの海運大手マースクに勤務。米スタンフォード大学でMBAを取得したのち、経営戦略コンサルティング会社に勤務。2015年1月にエルサを共同で設立した。エルサはフリーミアムモデル。無料のトライアル期間の後は有料になる。日本、インド、インドネシアでのユーザー拡大を目指し、東京にオフィスを設置。

構成=成相通子 

VOL.43

24歳、新進気鋭のインドネシアベンチャー投資...

VOL.45

東大卒・無職のシングルマザーが目指した「自...

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい