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3. The Tampon Book



最後は、PR部門のグランプリを獲得した「THE TAMPON BOOK」だ。

ドイツの消費税率は一律19%となっている。しかし、生活必需品に限っては7%の税率に下げている。しかし、その生活必需品の中に生理用品は含まれていない。

そこで消費税率が7%である「本」に目を付け、本の中にタンポンを入れることで少ない税金で買えるようにするアイデアだ。タンポンを入れた本の内容はカジュアルなイラストとテキストで現状のジェンダーギャップや税制度についての疑問を投げかけている。



THE TAMPON BOOKでは「生理用品は贅沢品ではない」=「生理は日常的なことである」というメッセージを伝えようとしている。それと同時にこの作品でもジェンダーギャップがもう1つのテーマとなっている。

多くの社会で法律を作ってきたのは男性である。ドイツも同様で、1963年にタンポンが最も高い19%の税率に決まった時、連邦議会の議員は全員男性だった。

「タンポンの税率が19%なのはおかしい」という問題提起には戦うべき敵が必要となる。ここではその敵は議会だが、当時は男性議員しかいなかったという事実を「蒸し返す」ことでジェンダーギャップの問題も付加しているのだ。

THE TAMPON BOOKはタンポンを本にしてしまうことで高い税率を逃れるという、法律の裏をかくアイデア自体が非常に優れている。本をくり抜いてタンポンを隠すようなプロダクトはまさに「脱税」を連想させる。


そしてプロダクトそのものはもちろん、ムービーに至るまで丁寧にアートディレクションがなされ、圧倒的な完成度を誇っている。エントリームービーは白黒を基調にした中で象徴的な「赤」を効果的に使っていて、伝えたいことがとてもわかりやすい。生理のPERIODと終わりのPERIODをかけた「PERIOD.」で動画を締めるセンスには鳥肌が立った。

巧みな課題設定とクリエイティブの完成度の高さは、まさにグランプリにふさわしい作品だった。

固定観念を変えるには衝撃が必要

女性差別や女性蔑視などのジェンダーに関する課題は昔から身の周りに溢れていたが、タブー視されがちで、オープンな議論が進んで来なかった。まだまだ男性の力が強い社会では、社会全体としてこの問題に「向き合う気が起きない」と表現するのが合っているように思う。

みんなが気付いていない、気にかけていない課題に注目を集めるためにはハッとさせる「驚き」が必要だ。そのためにクリエイティビティが大きな力を発揮できる。

先に紹介した3つの作品を見ればクリエイティビティの効果を実感できるはずだ。多くの男性にとって、ポルノや女性の身体の悩み、そして生理用品に関する課題は他人事だが、これらの作品を見れば、それが重要な課題であることに気が付き、自分の意識と行動を変えたいと感じるのではないだろうか。

これこそがクリエイティビティの可能性である。興味のない話を真正面から説明されても人は聞く耳を持てない。固定観念を変えるには、それ以上の衝撃が必要なのだ。

ジェンダーの課題をもっと「世の中ごと」に押し上げ、みんなで前向きな議論ができるようにするために、クリエイティビティの果たす役割は大きい。

おまけ:Dream Crazier



最後にNikeの「Dream Crazy」というキャンペーンの中で制作された「Dream Crazier」という動画を紹介したい。とても素晴らしい動画ではあるがあくまで動画を制作しただけであるため、上記の3作品とは分けさせてもらった。

この作品も先に紹介した「The Last Ever Issue」と同じく女性差別に強く反対している。スポーツの世界において、女性が感情をむき出しにしたり超人的な結果を残したりした時、男性の場合とは異なる反応が起こることがある。ときに「ヒステリック」だと言われたり、「クレイジー」だと言われてしまう。

ボクシングで相手と激しく打ち合う女性はクレイジーなのだろうか。バスケットボールで豪快なダンクシュートを決める女性はどうだろう。テニスでグランドスラム4大大会を23回も優勝し、出産した後に復帰した女性は?

男性と同じかそれ以上の活躍をしても、女性は「クレイジー」と心ない言葉を浴びせられてしまうことがある。でも言わせたいやつには言わせてやれば良い。クレイジーな女性が道を切り開き、世の中の常識を変えていくのだ。

Dream Crazierは本当に素敵な動画で、何度観ても目頭が熱くなる。

文・写真=入澤諒

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