ビジネス

2019.07.17

銚子電鉄の「経営がまずい!」を救う「まずい棒」 100万本売上げるまでの秘話

「まずい棒」考案者の寺井広樹さん


──ほう、なるほど。

銚子電鉄には「絶対にあきらめない駅」という駅名があって、“絶対に諦めない”が会社のモットーになっているんです。

その後、竹本社長が直接本家のA社さんに電話を掛けてくださったんですよ。でも、思うようにいかず、社長凹んでしまって。今度は、私が竹本社長を励ましました、「絶対諦めないがモットーですよね」と。

何度かお電話しましたが、うまくいかなくて竹本社長が「直接、工場に行きましょう」と仰って、アポなしで工場へ足を運びました。でもその日はA社さんが研修だったようで、誰も工場に居なくて。

私たちとしては「御社に対して、ライバル心を持っているわけではないんです。あくまで先行商品に対する、リスペクトを前提としたオリジナル商品なんです」というのを、きちんとお伝えしたかったんです。

ある日、そんなビジネス・ストーカーみたいな事を続けていると、A社さんが折れてくれたんです。公認というよりも黙認ですが、やはり懐が広いです。

発売早々、初期生産分1万5千本が完売

それで去年の8月3日の「破産の日」に「まずい棒」を販売しました。もちろん不安はありましたが、すぐに初期生産分1万5千本が完売しました。



──初日で完売。銚子電鉄の駅だけで売ったんですか?

はい。今はネットでも購入できますが、最初は銚子電鉄の3駅のみで販売していました。

──そんなに売れるほど話題になったきっかけは何だったんでしょう。

発売日前にYahoo!ニュースのトップに掲載されたのも大きいと思います。問い合わせが殺到して、販売当日もお客さんで長蛇の列ができたんです。

それからまずい棒は、漫画家の日野日出志先生にイラストを描いて頂いたんですが、日野先生の15年ぶりの書き下ろしなのもあって、さらに注目されたんです。


ホラー漫画界の巨匠・日野日出志先生

──味は結局コーンポタージュや、チーズ味に。

はい。味は個人的な好みで決めた部分もあるんですが、伝説の銘菓「カール」がいま関西地域以西でしか販売していないそうで、カールをまた食べたい人達がいるんじゃないかと思って、チーズ味に決めました。

それから、パッケージの「まずえもん」というキャラクターの髪の毛も「カール」させようと思いつきました。日野先生はホラー漫画家ですが、もともと杉浦茂先生に憧れてギャグ漫画家を目指されていたこともあって、こういった怖かわいいテイストがお好みです。細かなリクエストにも快く応じて下さいました。


メインキャラクターのまずえもん

不味さ探しに、“気まずい”ラーメン店へ

制作過程では、不味いと評判のラーメン屋さんにも行きましたよ。

──そのラーメン屋さんはどうでしたか。

そこは老夫婦がやってらっしゃって、なんか気まずかったですね。見られてるんですよ、ずっと食べているところを。気まずい空気感でした。

当時は「もうなんでもやろう」って思っていました。海外に何かとっておきの不味いものがあるなら、海外にも行こうと思っていましたし。とにかく商品化したかったんです。

──足を使うって重要ですね。

はい。多分その熱意が、A社さんが折れてくださった理由にもなっているのかもしれないですね。
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文=須貝直子

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