MLBは後半戦に突入、注目は打者専念の大谷選手の活躍だ


スキャッグス投手の弔い合戦

今期の後半戦は、エンゼルスにとってはただの後半戦ではない。7月2日、遠征先の宿舎で突然亡くなったタイラー・スキャッグス投手の弔い合戦という意識が生まれ、チームの闘志がかなり高まっているという。

シューラー・ディクソン記者によれば、遠征に同行していた報道陣は、今回の突然の悲劇に、エンゼルスの選手たちが滅多に見せない生な感情を見せたことに驚いた、と指摘している。

ミスター・エンゼルスのトラウトは、インタビューの途中で号泣し、打ち切らざるを得なかったということだし、ジャスティン・アップトンも無理に笑顔とユーモアでインタビューを受けていたものの、やはり答えられなくなり、トラウトが後ろから肩を支えていたという。投球に関するアドバイスをもらうなど、兄貴分として慕ってきた大谷選手の悲痛な姿も見られたという。

やはり、生前の彼と親しかったアンドリュー・ヒーニー投手は、直後のヒューストン・アストロズとの試合の最初の1球で、スキャッグス投手の大きく割れるスローカーブを再現する「予告第一投」を投げた(打者であるジョージ・スプリンガーもこのことは知らされており、ホームランにできる球であったが敢えて見送った)。また、エンゼルスは今季の最終戦まで、出場選手がスキャッグス投手の背番号「45」のワッペンをユニフォームにつけて戦う。

去年まで、温厚なマイク・ソーシア前監督が18年間も率いてきてチームワークに徹するエンゼルスは、1人のスタープレーヤーが活躍するとチームも盛り上がる特質がある。最後にプレーオフに出場した2014年は、トラウトの強烈な大活躍がチームを牽引した。この年、トラウトは自身初のア・リーグMVP(史上5番目の若さ)とハンク・アーロン賞を受賞している。

ということで、オースマス監督が太鼓判を押すように、大谷が好調ならエンゼルスの後半の戦いはかなり期待できるものになり、5年ぶりのプレーオフ進出も実現するかもしれない、と前出のライス記者の鼻息は荒い。2014年も、やはり後半の調子が絶好調だった。7月に19勝8敗、8月に19勝10敗、9月に15勝11敗と確実に勝ち星を重ねたのだ。

エンゼルスは前半戦45勝46敗と1つ負け越していたが、大谷の活躍で2014年の再現を果たせば、ライス記者の期待も、現実のものとなるかもしれない。今季は打者に専念している大谷選手から目が離せない。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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