「奴隷制時代との関連性」が感じられるとしたキャパニックの主張に、投資家たちも共感したのだろう。
ナイキが売り出すはずだった140ドル(約1万5000円)の「エアマックス1 USA」についてキャパニックが懸念したのは、かかとの部分にあしらわれていた「ベッツィー・ロス・フラッグ」だった(星の数が独立当時の入植地の数と同じ13)。この国旗はアメリカ独立革命が起きたころに作成され、1777~95年まで使用された。
7月4日を祝ってシューズを発売するというナイキの意図は良かった。だが、そのデザインは賢明ではなかった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、キャパニックは13個の星が円を描くこの独立当時の国旗について、屈辱的であるとの考えを示した。
キャパニックは2011年にナイキはと契約。だが、2018年9月に(「Just Do It」のキャンペーンに)起用される前の2年間は、同社の広告に全く顔を見せていなかった。米コンサルティング会社、エイペックス・マーケティング・グループによれば、このキャンペーン・ビジュアルは発表されるとすぐに、メディア露出価値が4300万ドル(約46億4700万円)を超えた。
ミレニアル世代の間では、社会問題とブランドの利益は密接につながっている。ニュースサイトのビジネス・インサイダーは上述のキャパニックの広告がリリースされたとき、株取引アプリのロビンフッドを利用する投資家のうち、1万5191人がポートフォリオに新たにナイキを加えたと報じた。
また、調査会社ニールセンによると、アフリカ系米国人のうち18~34歳の38%、35歳以上の41%が、社会的大義を支援するブランドの製品を購入したいと考えているとう。
スニーカーのオンライン「取引所」を運営する米ストックXによれば、「ベッツィー・ロス」のシューズには販売中止後、2000%近いプレミアムが付いた(現在は取り扱っていない)。
新たな問題も
一方、アリゾナ州のダグ・デュシー知事はこのスニーカーの一件を受け、ナイキが州内に建設予定の新工場への約200万ドルの補助金の拠出を取りやめるよう、同州の商業公社に指示したことを明らかにした。
だが、新工場がおよそ500人を雇用するとされていたことを考えれば、知事の行動は同州の住民に損害を与えているだけのようにも思える。