ビジネス

2019.07.13

EVに巨額投資、中国不動産王の「危険すぎる賭け」

恒大集団(エバーグランデ・グループ)許家印(Hui Ka Yan)会長 / Getty Images

香港取引所に上場している不動産開発大手「恒大集団(エバーグランデ・グループ)」の許家印(Hui Ka Yan)会長は、2017年10月に資産額が453億ドル(約4.9兆円)に達し、アジア一の富豪となった。

しかし、その栄光は長くは続かなかった。許の資産の大部分を占める恒大集団の時価総額が、空売り圧力などによって328億ドルまで暴落したのだ。

恒大集団は、不動産開発以外にも、テーマパークやサッカークラブ、病院、ミネラルウォーター販売など幅広い事業に投資をした結果、莫大な負債を抱えている。許が最近熱を入れているEV(電気自動車)開発は、これまでで最もリスクが高い投資だ。

「恒大集団の財務状況は逼迫している。同社は既存の借入を返済するために、新たな借金をする必要に迫られており、資金調達を常に模索している状況だ」と香港に本拠を置くGMT Researchのアナリストは話す。

恒大集団は今年、67億ドルの社債を発行し、日本を除くアジアの債券市場において社債発行額が最も多い企業となった。同社は、調達した資金を借入の返済とEVの製造に充当するとしている。

GMT Researchによると、恒大集団の純有利子負債は昨年末時点で706億ドルに達しており、その大部分は中国全土で安価な土地を取得するために借り入れたものだという。中国の不動産価格が高騰する中、恒大集団は売上高ベースで国内2位の不動産デベロッパーとなった。

一方、借入も莫大な規模に増え、同社は2017年に投資家の不安を払拭するため、負債圧縮プランを発表した。しかし、同社は引き続き短期借入金の借り換えに追われている。2018年度の決算資料によると、今後12ヶ月以内に返済期限を迎える借入金は473億ドルと、現金残高の304億ドルを大幅に上回っている。

恒大集団の財務リスクを一層高めている要因の一つが、許による本業と無関係な事業への投資だ。今年3月、許は恒大集団を3〜5年後に世界最大のEVメーカーにすると宣言し、数百億ドルを投じて工場を建設する契約に署名した。

上場している傘下のEvergrande Healthは、10億ドル以上を投じてスウェーデンの自動車メーカー「National Electric Vehicle Sweden AB (NEVS)」と上海のバッテリーメーカー「CENAT New Energy」の経営権を取得したほか、英国の電気モーターメーカー「Protean」を買収した。
次ページ > 中国政府が救済に乗り出す?

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事