フェイスブックの欧州支社長を務めたBaroness Joanna Shieldsが率いるBenevolentAIは、AIで新薬の発見や開発、テストを効率化し、新たな医薬品を市場にもたらそうとしている。同社は臨床試験や学術論文を含む医療データを取り扱うプラットフォームを構築したが、その実用性はまだ検証段階だ。
2013年にKen Mulvanyが設立した同社は、新たな資金調達に向けシンガポールの政府系ファンド、テマセクらと面談を行ったとタイムズは報じた。
複数の関係者がタイムズに語ったところによると、BenevolentAIの評価額は前回の半分以下にダウングレードされる可能性があるという。これが真実であれば、同社は評価額10億ドル以上の、ユニコーンの地位から転落することになる。
BenevolentAIの既存出資元にはNeil Woodfordがあげられるが、同社が運営するファンドは最近、非上場企業への過剰投資や冴えないパフォーマンスで、出身者から強い非難を浴びた。Equity Incomeという名のそのファンドは、最盛期に128億ドルの運用額を誇ったが、資金の引き出しが相次いだ結果、現在は46億ドルにまで縮小した。
2018年にBenevolentAIは2680万ポンドの損失を計上した。売上は680万ポンドをやや上回る水準だった。同社の収益源の一つは大手製薬企業へのテクノロジーのライセンス提供であり、今年4月にはアストラゼネカとの提携をアナウンスしていた。
同社のコスト増の主要因は、AIやマシンラーニング分野の人件費の高騰にある。AI研究者らは数十万ドル規模のサラリーを要求することが一般的で、トップ研究者の年収は100万ドルを超える。
人材獲得の競争が激化するロンドンで、BenevolentAIはグーグルのディープマインドやフェイスブック、バビロンヘルスらに打ち勝つ必要がある。同社の広報担当は「急成長を遂げる当社のような企業は常に、新たな出資元の選定にあたっている。しかし、今回の報道は事実ではない。当社はまだ次回の出資や評価額に関して一切合意していない」と述べた。