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米ペンシルベニア州のフィラデルフィアでは、行政が「モスキート音」と呼ばれる高周波ノイズを用いて夜間のエンタメ施設などから若者を排除している。地元議員らはこの行為が「音声兵器を用いた若者の駆除作戦」であるとして抗議している。

モスキート音のルーツは2005年に英国企業が開発した、小型スピーカーを用いた若者の撃退ツールにある。モスキート音は17キロヘルツという非常に高周波数のブザー音を流すことで、若者を不快な気分にさせて遠ざける。高周波数のサウンドは、年齢とともに聞こえ難くなるため、モスキート音のターゲットとなるのは13歳から25歳の年齢層だ。

フィラデルフィア市は2014年から1台5000ドルのデバイスの設置を開始し、現在は31箇所で街をたむろする若者らを排除している。

このデバイスを販売する業者Moving Sound TechnologiesのCEOのMicahel Gibsonは、公共ラジオNPRの取材に「モスキート音デバイスの目的は、若者たちを彼らが訪れるべきでない場所から遠ざけるだけであり、落書きなどの被害を抑えることができる」と述べた。

市の担当者らはモスキート音に危険性はないとしているが、海外では安全性を危惧する声もあがっている。ドイツの健康管理当局は、モスキート音が10代の子供に与える影響は軽微だとしている。しかし、小さな子供や大人であっても、長時間に渡りこの音を聞き続けた場合、何らかの健康被害が発生する懸念があると述べた。「めまいや頭痛、吐き気などを催す場合がある」という。

欧州評議会は2010年、これらのデバイスが「若者たちに痛みを与えるもので、人道的見地から受け入れ難い」と述べ、欧州の国々に対し公的な場所での使用禁止を呼びかけた。

その後も欧州では使用禁止に向けた動きが続いている。しかし、フィラデルフィアの広報担当は「モスキート音デバイスの導入は、一定の成果をあげており、地域コミュニティに利益をもたらしている」と述べた。

市が運営するメディアAction Newsによると「デバイスの導入はコミュニティの人々や、地域の議員、警察などの要請に基づいて実施された」という。現地では公園やレクリエーション施設の60%に監視カメラが導入され、モスキート音デバイスとセットで運用されるケースもある。

モスキート音に反対する地元の女性議員、Helen GymはNPRの取材にこう述べた。「フィラデルフィアは銃乱射の問題に対処し、若者が安心して過ごせるスペースを増やそうとしている。税金を用いて若者たちを、安全な場所から追放するような試みは言語道断だ」

Gymはモスキート音が「音声兵器だ」と述べている。「このような行いは公共の利益をもたらすものではない。税金の使い方として間違っている」

この議論は今後、全米レベルで注目を集めることになりそうだ。

編集=上田裕資

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