日本では川崎市が6月24日、ヘイトスピーチを行った際には、50万円以下の罰金を科すことを盛り込んだ差別撤廃条例の素案を公表。ヘイトスピーチを規制する条例に、刑事罰を設けるのはこれまでに前例がない。
7月5日、フランス議会は、インターネット上のテロや暴力に関する書き込み、ヘイトスピーチなどの投稿について24時間以内にFacebookやGoogleなどのプラットフォーマーに削除を求め、応じない場合には最大で125万ユーロ(約1億5200万円)の罰金を課すことを発表した。
民間で抑止するには限界があるゆえの行政側の動きだろう。
しかし民間の企業には、このヘイトスピーチの負のエネルギーをプラスに変える力があるかもしれない。
その好例が、カナダのアフリカ系の人々に向けた旅行サイト「Black & Abroad」の、ヘイトスピーチを逆手に取ったキャンペーン「Go back to Africa」だ。
北米諸国のアフリカ系の人たちに向けて、「Go back to Africa(国へ帰れ)」という言葉とともに差別的な言辞が、オンラインで1カ月に5000回ほど表示されているという。
そこで「Black & Abroad」は、データ活用に特化したカナダのクリエイティブエージェンシー「FCB/SIX」と組み、ヘイトスピーチを逆利用した、アフリカの観光キャンペーンを行った。
このキャンペーンでは、SNS上に「Go back to Africa」という言葉が投稿されると、AIがそれを検知。「Go back to Africa」以外の部分を黒く塗りつぶし、背景にアフリカの美しい風景やそれらの土地を旅するアフリカ系の旅行者の姿が現われるというもの。
そして、ツイッターやユーチューブに表示されるクリエイティブの飛び先は、アフリカ54カ国を旅先として紹介するBlack & AbroadのWebサイトになるというものだ。