宅配クライシスと再配達率の高さ
近年、アマゾンや楽天を始めとするネット通販の普及により、宅配便の取り扱い個数は2017年時点で10年前より32%も増加(国土交通省発表)。物流各社は人手不足などで個数の急増に対応できず、「宅配クライシス」と言われる言葉まで生まれるほどだ。中でも問題となっているのが再配達。2019年の国交省の発表によると再配達率は全国で約16%、都市部では18%と物流各社の悩みの種となっている。
宅配クライシス、といわけ再配達率の高さという深刻な状況を目の当たりにし「日本は世界一、物流システムやインフラが整っているにもかかわらず、なぜだろうか。スタートアップとしてこの社会問題を解決できれば面白いことになるのではないか」とYperの内山智晴代表取締役社長は考えた。
治安の良い日本だからこそできるシステム
内山らが最初に考えたのは、街中に自動販売機のように宅配ボックスを設置することだった。しかし、導入コストやメンテナンスコストを考えるとマネタイズが困難。そこで、内山は配送員とユーザーという2つの視点から考えようと、配送会社で働いた。ちょうどその当時ニュースになったのが、アマゾンがアメリカの一部地域で展開した「Amazon Key」。これは、不在時に配達員が玄関ドアを解錠し家のなかに荷物を届けるサービスだ。
ただ、ユーザーは、プライベート空間に見知らぬ人に入られたくない、一方の配送員もプライベート空間への立ち入りでトラブルになるのだけは避けたいという心理的なハードルが両者にある。日本の状況を考えると、生協や牛乳の宅配など玄関前で受け取る習慣がある。