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2019.07.13 20:00

アイデアを生む「π型人間」のすすめ | ショートショート作家が行く

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しかし、アンテナの感度はいったいどうすれば上がるのだろうか。伊藤の考えを尋ねてみた。
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「様々な情報に触れ、考えることが重要です。ただ、情報というのは勝手に歩いてきてはくれず、自分から取りに行かなければなりません。そのためには、いろいろな人と会わなければならない。そして、情報をもらうためには相手におもしろい人間だと感じてもらい、情報を出してみようと思ってもらわないといけません。もちろん、誠実な対応も大切です。開発営業部のメンバーも日頃から展示会などに足を運び、何かアイデアを思いつくともらった名刺に連絡し、積極的に提案するように心がけています。そうすることで、相手に『おもしろいから、こっちの情報も渡してみよう』と思ってもらえる可能性が高くなり、新たな情報が手に入ることにつながります」 いい提案ができる人材になるために、伊藤は開発営業部にだけでなく、社員にこう伝えている。

「π(パイ)型人間になってほしいと言っています。“π”の横軸は幅広い知識、2本の縦軸は異なる2種類の専門性です。よく言われるT型だと専門性がひとつしかなく、昨今の課題に対して対応することが難しい。その点、π型であれば、2つの専門性を組み合わせた提案をすることが可能です。たとえば、より色づきのいいイチゴを生産したいという課題があったとき、農業とフィルムの専門性を持っていれば、イチゴが美しく色づきやすい波長を通す農業用フィルムを提案することができるでしょう。私自身は経営と電気化学が専門ですが、社員にもπ型人間になってほしいと思っています」

イノベーションを起こすためには提案するに留まらず、実際に実現に向けて行動することも重要だ。アキレスの事例を聞いていると、「まずは自分たちで開発してみた」「とりあえず、やってみた」という話が頻出する。行動の重要性について、伊藤は言う。
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「うまくいくかどうかの確信というのは、最初から持てるようなものではなく、具体的に行動しながら徐々に深めていくべきものです。言い換えると、不確定なものを、いかに行動で確実なものにしていくか。シミュレーションや計算も大切ですが、捉われ過ぎると機を逃す可能性が高くなります。それならば、『やってしまえ!』と思います。やってみて、その結果をまたすぐに評価すればいいのです」
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文=田丸雅智 写真=小田駿一 イラスト=越井 隆

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