ビジネス

2019.07.12 16:00

行動経済学Xフィンテック「テクノロジーより人間を理解せよ」

デ・ラ・ロサ


デ・ラ・ロサが研究パートナー企業に説いている重要な教訓の一つが、「人は障害や面倒な手続きを嫌うから、行動を変えやすいようにお膳立てするといい」というものだ。最近、クレジット・カルマと行った実験では、被験者となった一部の会員にあるメールを送った。クレジットカードの稼働率を下げれば、信用スコアを上げることができるという内容だ。 
 
特定のクレジットカードの清算を勧め、クリックすればその手続きができるページにつながるボタンも盛り込んだ。実験の結果はまだ公表されていないが、メールを受け取った会員は、メールを受け取らなかった会員に比べて信用スコアが著しく上昇した、とデ・ラ・ロサは明かす。
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アリエリーは、スタートアップ企業が行動学に基づくイノベーションを主導していることにはもっともな理由があると語る。従来の銀行では、「利用者に過剰な出費や借り入れをさせることがサービスの動機になっています。それでは、イノベーションやより良い意思決定を促すためのインセンティブは生まれません」と主張する。シリコンバレーに何億ドルもの資金をつぎ込ませているフィンテック企業も、純粋な理念ばかりではない。

デ・ラ・ロサは、無料のフィンテックサービスの一つの問題点を指摘する。「無料の製品をつくる場合の唯一の事業モデルは広告媒体になることです。ですから、人々が必ずしも必要とはしていないものを売りつけようとする世界に足を踏み入れることになります」。
 
これは、あまり賢明な発言ではないかもしれない。デ・ラ・ロサの研究パートナーの一つ、クレジット・カルマもクレジットカード会社からの紹介料で何億ドルも儲けている会社だ。しかし、そこは重要ではないようだ。彼女にとっては、個人的な思い入れがある問題なのだ。

「手掛ける実験の一つひとつに、自分の家族の姿を見ているのだと思います。私もそういう人生を生き抜いてきましたから。給料ぎりぎりの生活がどんなものか、よくわかります」
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コモン・センツ・ラボ◎2015年にウェンディ・デ・ラ・ロサとダン・アリエリーが創設した低中所得世帯の財政状況向上を目的とした応用研究機関。デューク大学の「先進後知恵研究センター」の傘下にある。

文=クリスティン・ストラー 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=木村理恵

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