ビジネス

2019.07.10

戦略的に「遊び場」つくる インフルエンサーを集めたコンテンツスタジオの勝ち筋

左から、CCOの栗林和明、クリエイティブアーティストのあさぎーにょ


設立して間もないタイミングだからこそ、会社にとって短期で見えやすい利益は重要な意味を持つ。マネタイズのため、少しでもクライアントを意識した企画を作ることはあるのか。栗林に聞くと、「ありません」と一言。

「僕たちが面白いと思うコンテンツを発信する。それによってチョコレイトという旗が立ち、そこにまた面白い人達が集まってくる。そんなコンテンツスタジオにしたいんです」

その言葉に、あさぎーにょも首肯する。「YouTubeの動画についたコメントはいつも見ていますが、参考にしすぎないようにしています。再生回数もそう。ファンの方の声や数字に引っ張られてしまうと自分のやりたいことができなくなってしまいます。だからファンの方の声にも応えつつ、自分が面白そうと思ったものを、どう切り取って伝えるかを考えています」

あさぎーにょの代表作といえば、TikTok上で大ブームになった「投げキッス運動」だ。累計再生回数はなんと約1億4000万回。

着想の経緯を「みんな自分を可愛く見せたいから、SNOWとかSnapchatとかのフィルタを使うと思うんです。あざとくて普段はできない動きでも、『TikTokを撮る』ことを言い訳にすればできる。そんな気持ちを考えながらできました」とあさぎーにょ。

現在は、その盛り上がりをさらなる大火にするため、「投げキッス運動」を3分半のバラードに再編集した楽曲を7/9にリリースした。


投げキッス運動の長尺版MV「キミのことが好きで好きで好きで」の制作風景

ヒットするかわからない不確実性にあえて身を委ね、小さな煙を見逃さず燃料を投下することの連続でコンテンツ強化とさらなる広がりを狙う。

企画の根っこにはビジネス的な価値判断基準が介在せず、各々の好きなことができる場を作ろうとしているのも、強烈な個の集団が生み出すコンテンツクオリティの高さゆえだろう。

ストーリーメイカーやプランナーなど、SNSを中心に活躍する個が集まっているチョコレイト。しかし、SNSを舞台にしたコンテンツメーカーは次々に登場し、その多くが一瞬の火となりいつの間にか消えていく。

激動の業界においてチョコレイトはどんな存在になっていきたいのか。訊ねると、「スティーブ・ジョブズと手塚治虫が対面にいて、その横にはマイケル・ジャクソンが座っていて、みんなで話をしている。そんな会社をつくりたい」と栗林。

「アニメーションの代表的な企業はピクサーで、ゲームなら任天堂。でも、面白いものを追求したときにはその両方の分野の知恵を使ってもいいわけです。自社事業でもクライアントワークでも、楽しいものは領域問わずすべてやっていきたい。僕らの勝ち筋は、そこにあります」

文=石原龍太郎 写真=小田駿一

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