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そこで協力関係が生まれた。ウィリアムズがCEOとなってカードレを経営し、ブローカー・ディーラー(取り次ぎと自己売買の両方を行う業者)としてのライセンスを得る。ジャレッドが経営するクシュナー社は、カードレのプラットフォーム上で行われる初期の取引に物件を提供する。ジョシュのスライブ・キャピタルはウィリアムズがIT要員を雇うのに手を貸し、ベンチャー投資会社(VC)にも紹介する。クシュナー兄弟は投資したり、ウィリアムズに裕福な投資家やほかの不動産会社を紹介したりすることにもなった。

ブラックストーンを辞めるのは「難しい決断だった」と、ウィリアムズは明かす。

「人生であれほどの金を稼いだことはありませんでしたからね。ブラックストーンに残るのが富豪になるための最短距離でした。毎日ひたすら出社して働くだけでよかったのです。でもそうはせず、何かのために思いきって飛ぶことにしたのです」

とはいえ彼には、“クシュナー家”という転落防止ネットがあったのも事実だ。

当初、カードレはマンハッタンにあるクシュナー社に間借りしていた。最初の2件の取引は、クシュナー一家が扱うつもりでいた物件を対象とするものだった。1件はクイーンズ区に立つ4棟のアパートメント・ビル(5500万ドル)、もう1件はニュージャージー州チャタムの複数世帯用の住宅(1億ドル)だ。これによりウィリアムズは不動産をクラウドファンディングの対象にし得ることを証明し、15年3月に1850万ドルのベンチャー資金を初めて調達することができた。出資したVCにはティールのファウンダーズ・ファンド、ボストンのゼネラル・カタリスト、ビノッド・コースラのコースラ・ベンチャーズといった一流どころが顔をそろえた。もちろんジョシュのスライブ・キャピタルも、である。

「初期段階では、ジャレッドの貢献は欠かせなかった」と、ウィリアムズは認める。 「彼の助けや支えがなかったら、今いる場所にはたどり着けなかったと思います。このモデルを信じる不動産業者はほかにいなかったのです」 それでもプレイヤーは次第に増えていった。カードレはすでに17の不動産業者と協業しており、使いやすいインターフェイスと割安な手数料で引き寄せた新たな投資家層の金をそれらの会社に流入させている。カードレが投資家に課す手数料は、契約時に運用する不動産価額の1%、その後は年率1.5%。従来の不動産投資マネジャーのように、利益の20%もの追加的な「運用成績報酬」を取ることはない。一方、協業する不動産業者からは、それらの業者がキープする15%分の利益のうちのわずかな割合を受け取っている。

ウィリアムズは短期間にカードレを偉大なスタートアップとなるべき位置まで持っていった。ところが、そのすべてが16年11月を境に変わってしまったのだ。

謎を呼ぶ、ジャレッドの思惑

それでも、カードレは前進を続けている。同社はこれまでに5億ドル以上の資金を調達し、ニューヨークからサンディエゴまでの22件、総額20億ドル相当の不動産を取得してきた。14兆ドルという米国の商用不動産市場全体から見れば大海の一滴だが、良質の商用不動産をクラウドファンディングするというアイデアの有効性は十分に確認できた。今では新たな物件を出すと数週間で完売する。カードレが目指すリターンは年率で10%台の前半から半ばというところ。実現利益を出した唯一の案件は正味16%の内部収益率(IRR)だった。

文=ネイサン・ヴァルディ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫

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