アメリカの健康保険会社は、実際の医療費を支払う「出来高払い制」から、「価値に基づいた医療保険」と「ポピュレーション・ヘルス」(集団全体の健康向上を効率的に実現する考え方)モデルへと移行しつつある。ポピュレーション・ヘルスとは、患者が適切な場所で適切なタイミングに良質な医療を確実に受けられるようにすることだ。
ライドシェア企業各社は、そういった流れのなかで、自社が中心的な役割を担える可能性があると見ている。メディケイド利用者は複数の慢性疾患に悩まされ、医療機関への移動手段を持たないと言われている。その点、ライドシェアなら、患者を医師の診察に送迎できる解決策になるのではないかと、保険会社とメディケイド制度は考えているのだ。
メディケイド市場における機会が広がり続けているのは、「医療費負担適正化法(Affordable Care Act、ACA)」の下、貧困層に対する医療費の補助拡大を検討する州が増えているためだ。
アリゾナ州を含む36州とワシントンD.C.は、ACAを受けてメディケイド対象を拡大した。残りの14州はいまだ未導入だが、政治環境が変化するなか、ノースカロライナ州など複数が進展を見せている。
リフトは、アリゾナ州との提携発表に際し、「メディケイド制度の改定を目指す州が増えている。全米展開するリフトのネットワークなら、有効かつ力強いパートナーになることができる」と述べた。「当社は過去3年間、ヘルスケア業界の一流企業と提携を結び、診療予約している病院や薬局、フィットネスセンターと自宅を行き来しなければならない患者に対して信頼できる交通手段を手ごろな料金で提供してきた。医療搬送の仲介・手配を行うアリゾナ州のMTBA(Medical Transportation Broker of Arizona)やフロリダ州のAccess2Careを含む全米各地の組織と提携し、実績を積んできた当社であれば、経費削減の推進と、医療機関へのアクセス改善、利用者の満足度向上をただちに実現できる」