自動車販売員に扮したシュワルツェネッガー、EV希望客に「マッスルカー」をゴリ押しの理由

アーノルド・シュワルツェネッガー GettyImages

自動車業界はいま、100年に1度とも言われる大きな変革のときを迎えている。その心臓部であるエンジンが、モーターに置き換わりつつあるのだ。この動きは特に欧州の自動車各社のディーゼル排ガス不正問題が発端となり、そこにテスラのような電気自動車(EV)専業ベンチャーの躍進も加わり、全世界的に大きなうねりとなってきた。もちろん、気候変動による規制の強化も背景にはある。

しかしその一方で、ときに荒々しく、ときに官能的なエンジンサウンドは長く自動車好きに親しまれてきた。子どもたちが自動車のおもちゃで遊ぶときも、かならず「ブーブー」と言う。それは自動車が自動車であることの象徴だ。

”剛腕”セールスマン登場

そんな新旧の自動車を販売するディーラーに、ひとりの”剛腕”セールスマンが現れた。ハワード・クライナーと名乗る大男は、束ねた長髪にベースボールキャップ、口ひげ、そしてアロハシャツといういでたちで変装したつもりのようだが、その堂々たる体躯と言葉のアクセントは、誰からみてもアーノルド・シュワルツェネッガーだ。客たちもその胡散臭いセールスマンの正体にひと目で気づき、驚きのリアクションを見せている。

それはともかく、顧客たちのお目当てはやはりEVやハイブリッドカーだ。EVは静かだし、エネルギー面でのコストも少ない。道路によっては優先レーンもあったりする。米国ではエコカー普及促進を狙った減税措置が段階的に縮小されつつあるから、今のうちにどんなものか見て、買えるものなら買っておこうというのだろう。

ところがこのセールスマンは何を思ったか、EVの説明を求める顧客に耳を傾けるのは早々にターミネートし(終わらせ)て、とにかく大排気量エンジンでガソリンを垂れ流すような"マッスルカー"をゴリ押しするのである。そしてハマーのエンジンを激しく空吹かしし、もうもうと上がる煙に包まれて「ん~、シビれる香りだ」などとのたまう(直後にむせかえっているが)。

さらに「給油するのが面倒で…」という老夫婦に対しては「給油(pump)はときにセックスより気持ちいいものだよ」と少々品性に欠ける話も。この台詞、1977年の映画『鋼鉄の男/The Pumping Iron』内でシュワルツェネッガーが筋トレ(Pump)について語る場面に引っかけられている。
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文=Munenori Taniguchi

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