自動車販売員に扮したシュワルツェネッガー、EV希望客に「マッスルカー」をゴリ押しの理由

アーノルド・シュワルツェネッガー GettyImages


この動画の目的とは?
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実はこれは、EVの普及を促進すべく数十の企業や公的機関が参加するコンソーシアムVelozによるドッキリ風の宣伝企画。「Kicking Gas」と題されたこのキャンペーンは、SNSを中心に宣伝動画を拡散させるとともに、カリフォルニア州内数十か所に大型看板を掲示して展開された。



カリフォルニア州は2018年1月に、他の州に先駆け2030年までに500万台の無公害車を普及させる目標を掲げ、多額の予算を投じて必要なインフラの整備も進めている。
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顧客に耳を貸さないセールスマンを演じたシュワルツェネッガーも、自身がカリフォルニア州知事だったときに温室効果ガス排出削減の法律を成立させ推進してきた。それだけでなく、自身の所有するハマーを環境負荷の低い水素燃料やバイオ燃料に対応するよう改造し、2017年にはついにそのハマーとメルセデスベンツのSUV、GクラスをEVへとコンバートしている。

業界の構造も大きく変化

市場に出回る自動車の大多数がエンジンからモーターに変われば、業界の構造も大きく変わってくる。EVは電気さえあれば走るので燃料やエンジンオイルは必要なく、ガソリンスタンドは次第に用済みになっていく。そして、販売店はボンネット内の修理や消耗品の交換メンテナンス作業が激減すれば、収益の面で困るのだ。自動車メーカーにとってもEVはエンジン車よりコストが高く、その分利益が薄いため、あまり積極的な宣伝をしてこなかった。

Velozは、カリフォルニア大学デービス校が報告した「州内に住む人の50%以上がEVの詳細をまったく知らない」との調査結果を挙げ、市民の意識の欠如を払拭することで、EV購入への障壁を取り除くことがこのキャンペーンの目的だと説明している。

「Kicking Gas」は、低公害車のメリットを退屈な話で説くのでなく、EVの良さを求めてやってきた顧客とエンジン搭載車を売ろうとする販売店とのかみ合わないやりとりを実にわかりやすく、滑稽に伝えている。もちろん、エンジン搭載車すべてがこんなに酷いクルマばかりではない。酷いセールスマンを演じたシュワルツェネッガーは動画の最後で「電気自動車はお金と時間を節約し、環境保護にも役立ちます。そして運転の楽しさや興奮を犠牲にすることもありません。もう40種類以上も車種があるのだから、乗り換えない理由はないでしょう?」と呼びかけている。

文=Munenori Taniguchi

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