キャリア・教育

2019.07.10 15:00

「時には枠を変える」50代で2回転職、国連特別代表・水鳥真美


──どのような時に仕事でわくわくしますか。

自分がやったことが肯定的に人々の生活に影響を与えたと感じられる時に仕事のやりがいを感じます。5月にスイスのジュネーブでUNDRR主催の防災グローバル・プラットフォーム会合を開き、仙台防災枠組の実現に向けて議論しました。会議には国連加盟国政府の代表者をはじめ、災害で大きな被害を受けやすい災害弱者当事者や、彼らを支援する各団体の代表者なども含め、世界中から約4000人が集まりました。

中でも、貧しい国でコミュニティ活動をしながら現地の女性のための防災に取り組む団体や、自ら被災のリスクを減らすために防災活動に取り組んでいる障害者の方々などが会議に参加して、私たちの仕事が彼らの活動にとっていかに支えになっているかを語り、「ありがとう」と言われた時には、本当に純粋にうれしいと思いました。自分がやっている仕事が机上ではなく、実際に誰かの生活を改善し、豊かにしていると認識できる時が一番わくわくします。

──国連の仕事を選ばれたのはなぜでしょうか。

人の生活や命を守るという使命に大きな魅力を感じました。防災は、国連のような国際的なレベルで活動することにより、より大きな目的を達成することが可能になります。国連の仕事は、人権、開発、安全保障などさまざまな分野において「世界的な規模で普遍的に達成すべきこと」を進めていく仕事です。それは最終的に国連にしかできないことだと思います。もう一度自分がそのような仕事ができるか、定年する前に挑戦したかったんですね。もう数年で還暦なので、最後の仕事としてできればいいなと思っていました。

──人々の生活を良くしたいという思いの原点はありますか。

歳をとればとるほど感じるのが、自分がいかに恵まれたところに生まれたのか、ということです。日本は高度経済成長期。金銭的な苦労は一度もしたことがなく、父親の仕事の関係で海外に住む経験もできました。男女雇用機会均等法が制定される前の1983年に就職しましたが、両親は女性である私が働くことに肯定的で、支援してくれました。自分がちゃんと努力をすれば、順調な人生を全うできる環境でした。

しかし、世の中には数多の恵まれない人々がいることに比し、自分が恵まれていることに対する感謝とともに罪悪感を感じることもあります。そういった人々のためにできることがあるなら小さな役割でもやるべきだと感じます。

新卒で外務省に就職した時は、政府の仕事ならば性別に左右されずに働けると思った、というのが正直なところです。しかし、そこから始まって、徐々に社会に役立ちたいという思いが強くなりました。

──わくわくする未来、実現したい未来を教えてください。

寛容な社会、多様性が認められる社会が大事だと思います。多様性や異なる生き方や考え方が認められる方向に進んでほしい。皆が同じことを考え、同じ生き方をしている社会はとてつもなくつまらないですね。昔に比べれば、多様性が認められる世の中になってきましたが、日本では社会における女性の役割に対する固定観念がまだまだ強い。また良くも悪くも同一性を重んじる精神が強いので、外国人労働者の問題や同性婚などについても国民的な議論を通して合意を形成するというレベルには達していません。面白い未来というのは、さまざまな議論を経て、従来の固定概念や制約を超えられる社会だと思います。


みずとり・まみ◎国連事務総長特別代表。国連の防災担当トップとして、国連防災機関(UNDRR)を率いる。1983年、一橋大学法学部卒業。外務省で安全保障政策課長などを歴任した後、2011年に英セインズベリー日本藝術研究所の統括役所長に就任。18年3月から現職。東京都出身。

構成=成相通子 イラストレーション=Willa Gebbie

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