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2019.07.09 07:00

真夏の夜、京都のお寺が特別公開を始めた狙い。ロウソクの灯りで「金」の秘密を探る


成瀬:そういう意味で今回、金が一番面白いと思ったんです。『陰翳礼讃』の内容を日本の人はあまり知らない。だからこそ、今回入り口に『陰翳礼讃』を置き、内容を読んでもらい、想像力が膨らんだ状態で見てもらう。それが体験として面白いのではないか、と思い、そういう仕掛けにしました。



川上:お寺は本来、学ぶ場所なので、学びを提供しないのはお寺として問題がある。学びを提供しなければ、それは単なる観光地で、グルッと回って「綺麗だね」で終わり。

本来、学びの場所だったからこそ、学びの提供は第一に考えたい。そのため普段は一般公開していませんし、座禅会のみ行っている。学びなく、お寺に来るのは意味がない。それでは観光地だと思っているので、何か学べるものを提供する。今回は金襖の本来の見方を味わい、自分の過去に光を当てて内省し、それが他の人にどう繋がっていくかも考える。それを体験してもらうのが、学びにもなるし、面白いのかな、と思います。

成瀬:観光地とお寺の違いは仰る通りですよね。今はいろんな人たちが学びを求めて旅をしています。だからこそ、旅先で自分の内面に向き合う人も増えていると思うんです。とはいえ、学びの提供も難しくて、多くの場所では「感じることが学びだ」と言う。個人的には、それでは分からないと思うので、文脈づくりやとっかかりはつくっていかないといけない。そういう意味で、手前味噌ですがオーディオガイドなどは分かりやすいと思うんです。

耳元で川上さんが話している春光院の物語を聞きながら、中を巡れる。それが学びのとっかかりになると思います。旅とは本来学びの連続であると思うのですが、何かのために学ぼうと押し付けては学べないというのが持論です。何かのために学ぼうとすれば、そのためだけにと制限がかかってしまう。だから、何かのために学ぶのをやめるとき、すべてが学びになるんです。必要なのは入り口でありとっかかり。

川上:このお寺は京都学派の久松真一さんが住んでいた場所だし、入り口にあるツツジも仏教学者の鈴木大拙さんが植えたもの。ここは、やっぱり禅を学ぶ場所なんです。その流れをきちんと踏襲し、今も海外の人たちに禅を伝えています。ぜひ、夏の夜の春光院で金襖を見て、手紙を書くことで禅の一端に触れてもらえれば、と思います。

構成=新國翔大、写真=ON THE TRIP提供

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