桜の美しい春。紅葉の美しい秋。この2つの季節、京都は観光客で大いに賑わう。言い方を変えると、春と秋に観光客が集中していると言っていいだろう。夏は暑く、冬は寒いため、なかなか観光客が集まらない。
そうした中、京都市の協力のもと、夏の京都観光を盛り上げる企画が期間限定で行われている。仕掛けるのは妙心寺「春光院」とON THE TRIPだ。
普段、一般公開されていない春光院を特別公開(6月29日〜8月4日まで)。また「夜」の公開にこだわり、公開時間も17時〜21時の間となっている。本堂に足を踏み入れ、中を進んでいくと、ロウソクの灯りを模したLEDで照らされた金の襖がある。
暗がりの中にある金の襖が、夜のロウソクにぽっと照らされている──そんな光景を一目見るために、公開後から多くの観光客が足を運んでいる。
なぜ、普段は公開していない場所を夏の季節に特別公開することにしたのか。そして、金の襖をロウソクの灯りで照らすことに込めた思いとは何か。春光院を訪れ、副住職の川上全龍とON THE TRIPの成瀬勇輝に話を聞いた。
(左)ON THE TRIPの成瀬勇輝 (右)妙心寺春光院副住職の川上全龍
昔の金襖の楽しみ方を現代に
川上:春光院では宿泊する外国人向けに午前中1回を一般向け、午後などに貸し切り予約を受け付け、英語で座禅を行っているのですが、夜は特に何もすることがない。であれば、夜は庭をライトアップし、のんびりしてもらおうかなと考えていたんです。実際、友人に連絡して照明デザイナーを探し始めていたら、投資家の谷家衛さんのFacebook投稿に成瀬さんが出ていて。
その投稿を見て、成瀬さんは「面白いことをやられているな」と思い、Facebookに「面白そうですね」とコメントしてみたんです。そうしたら、谷家さんが成瀬さんと繋げてくれて。それで実際にお会いし、話をしているうちに、春光院が生かせる強みの話になっていき、まずは春光院を案内することしました。
春光院には京狩野の絵師・狩野永岳が描いたとされる金襖がある。これを見たお客様には「金は豪華絢爛、派手さをアピールするものではない。薄暗い中で見るのが本当の楽しみ方なんです」という話をしていて、成瀬さんにもそのことを伝えたんです。