ビジネス

2019.07.09 15:00

「正の経済圏」を伝播させていけば、選ばれるブランドになる|ライフスタイルアクセント山田敏夫


加えて、当時出来たばかりのクラウドファウンディングサイト「CAMPFIRE」で100万円集めていたことも見通しの甘さに拍車をかけました。100万円も集まったんだから上手くいくはずだと。でも、蓋を開けてみると、クラウドファンディングでお金を出してくれていたのはほとんど私の友達でした(笑)。

そんなことにも気づかずに意気揚々と事業を初めて、いきなり壁にぶち当たったわけです。1万円のシャツ400枚は原価で200万円分なので、2ヶ月後の工場への支払いまでに、クラウドファウンディングで集めた分を除いて最低でも残り100万円分を売り切る必要がありました。



まずは片っ端から友達に電話したんですが、既に「CAMPFIRE」で投資してくれているので買ってくれない。そこでスーツケースにシャツを詰め込み、喫煙スペースに行って個人の方に「シャツ買いませんか」と行商したりもしました。自分としては「ヤクルトレディ」ならぬ「ファクトリエマン」のようなものだから、それなりに受け入れてもらえるはずだと思っていたのに、すごい勢いで拒絶反応を受けましたね(笑)。

次に、個人から会社へとターゲットを変更しました。「ユニフォームとして使ってもらえませんか」とタクシー会社やエステサロン、ホテルなど片っ端からリスト化して連絡しましたが、これもコストが全く合わないという理由ですべてダメでした。



最後の作戦が「無料着こなしセミナー」でした。「一回知ると40年使える着こなしのセミナーをやります」と、会社の大小問わず400の会社に電話して13社アポを取ることに成功しました。そこでなんとかシャツを売り、ようやく最初の支払いの100万円を売り上げることができました。

作るところから売るところまで、最初は見向きもされませんでしたが、愚直にリスクをとって行動し続けて、壁を乗り越えていった感じです。

目の前の人に共感してもらい、「正の経済圏」を作る

──以前、本メディアでGROOVE Xの林さんが「起業家は非常識な真実を見つけることが重要」とおっしゃっていたんですが、先ほどの山田さんのお話は、工場の方からすれば「いやいや、ありえないでしょ」と非常識に映るところを、行動の量で理解を獲得していったという印象を受けます。

そうですね。普通、服を買う時ってみなさん素材や縫製の仕方よりもデザインや価格の方を大事にしているんですよね。そんな「どこ製か」なんて考えていない人達に我々の商品に共感してもらうためには、直接行商して共感してもらうしかないんです。これはWebだけではなかなか出来ない。
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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