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料理人・野村友里

舞台演出、映画監督、本の執筆など食をさまざまな視点から表現する料理人、野村友里。

「人にとって一番大切なのは食。食には、何ものもかなわない──」そう語る彼女には、音楽家や医者など全く違うフィールドの第一人者が自然と集まる。

「好きなことに深く潜る人生」を選択したことが「多様なアウトプット」につながったという。彼女の「求心力」の源に迫った。

──北海道・根室の森に棲む鹿を南青山の観客の目の前で解体、料理をする舞台を手がけられた、とうかがいました。

はい。2017年に南青山において、「食の鼓動─inner eatrip」という食べることを見つめ直す舞台を企画・演出しました。

この舞台の中央には厨房があり、その周りをぐるっと囲ったカーテンには影絵が浮かび上がります。観客は視覚だけでなく、嗅覚、聴覚で食材が持つ命のエネルギーや料理をする人の想いを存分に感じ取るのです。

この舞台は医者、ダンサー、映像作家、デザイナーを巻き込んだプロジェクトだったのですが、足を運んでくださった方に受け入れられるか、幕が上がるまでものすごく不安でした。

でも、いざ蓋を開けてみると、根室の鹿がステージに現れて、その後に「トン」と包丁でまな板を叩く音を聞いた瞬間に涙を流された方が何人もいらっしゃって……。

涙の理由はそれぞれだと思います。

食材や調理する人について普段まるで考えていないことに気がついたり、自分のいつもの料理がただの「作業」になっていることを自覚したり、忙しい日々を過ごす中でいつしか忘れてしまった大切なものが勢いをもって想起されたのでしょう。

きっとみなさんは「食」について、心のどこかに引っかかりをもっているからこそ、わざわざ足を運んでくださったのだと思います。

この舞台のように私一人ではなく、同じ問題意識や価値観をもったチームで舞台や料理を作らせていただく瞬間が私にとってはワクワクするかけがえのないものです。

──舞台に限らず、野村さんの周りには自然と素敵な人が集まりますね。

きっと、母の影響が大きいと思います。

母は、花嫁修行を経て家庭に入り、主婦であることにプライドを持っていました。

料理が好きで、40年も料理教室を続けて、77歳の今も新刊の本の撮影中です。正に「好きこそものの上手なれ」を体現しているんです。

いまだに新しい人に会い、出し惜しみなくアウトプットをして、人生の深みを増している母です。

そんな「好きなことに深く潜る人生・歳の重ね方」をずっと近くで見てきたんです。

構成=森屋千絵 イラストレーション=Willa Gebbie

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