──野村さんは海外のお店で武者修行をされた経験もあるんですよね?
2009年に食のドキュメント映画を撮ったのですが、映画製作後は宣伝活動もしなければなりません。「生きることと食べること」の関係性を探る旅をする中で、いつのまにか、地に足をつけて料理をしたい、料理に没頭する時間をもっと増やしたい、という欲求に気づきました。
いてもたってもいられず、米国カリフォルニア州バークレーにある「シェ・パニーズ」に飛び込みました。食品活動家として知られるアリス・ウォータースがオーナーを務めるレストランです。
「シェ・パニーズ」の厨房で働くことで料理の喜びを思い出すと共に、地産地消やオーガニック、手を加えすぎない料理にこだわる店の考え方・価値観にも心から共感できて全身の細胞が“プチプチ”と喜んだんです。
自分の中で何かが蘇ったようでした。
アリスはシェフとして活躍するだけでなく、オーガニック料理のバイブルである『アート オブ シンプルフード』(小学館)などの著書で知られる作家、そして「食育」という言葉が出てくるずっと前から子供達に食の大切さを伝えるなど「食品活動家」としても精力的にメッセージを発信していました。
その輝く姿や活動に強く惹かれたのです。きっとそれが今の私にも大きく影響していると思います。
──その後、2012年に「restaurant eatrip」をオープンされたんですね。
restaurant eatrip は、私が大切にしている「You are what you eat」(あなたは、あなたが食べたものでできている)というコンセプトをテーマにつくりました。
「食材が生まれた土地と背景、生産者もしくは循環がお皿から紐解かれて繋がっていく」。料理を口にされたお客様がそんなことを感じたり、どこかで伝わればとても嬉しいです。
原宿のど真ん中でお店を始める決心ができたのも、土地も緑も豊かで空が見え風が抜ける一軒家という稀有な場所だったからです。
──料理人として、喜びを感じるのはどんなときですか?
「You are what you eat」という店のコンセプトに共感し、たくさんのお客様が来てくれることに喜びを感じています。
プロポーズや誕生日、出産予定日直前など大切な機会に来店される方も多いです。
嫌いな食材が美味しくいただけるようになって頂けるのも嬉しい瞬間です。