障害者の死亡率は2倍。「災害弱者」の命を救う方法を、石巻で探る

みやぎセルプ協働受注センターの大久清美さん


障害を抱える被災者たちの厳しい現実

震災時に障害者や福祉職員がどのような困難に直面したかを伝えようと、大久さんらは沿岸部で17の障害者支援施設や個人に聞き取り調査し、それらをアーカイブ化したホームページ「3.11ソレカラ」を運営している。震災記憶の風化防止のため、宮城県からの受託事業として2015年にスタートした。


全国で行なっているパネル展示

約1年かけて各地で話を聞き、震災発生時から避難所での生活、再建への道のりまでにどのような出来事があったかを丁寧に綴っている。

聞き取り調査からは、障害を抱える被災者たちの厳しい現実が浮き彫りになっている。身を寄せた避難所では、障害への理解が少ないために心無い差別を受け、自ら避難所を去った人もいた。また施設の再建時には、不動産会社に「うつ病だの障害者だの、そんな人が通う所には貸せない」と入居を断られたこともあった。

大久さんは、災害弱者はこうした自らの経験や困難を発信する機会が極端に少ない点を指摘する。身体的・精神的な障害によって、被災体験を流暢に語れる人が少ないこと、また、当事者のなかには、話すことに遠慮やためらいを感じる人も多いことから、どうしても災害弱者たちの声は、健常者たちの後ろに影を潜めていた。

これまでの健常者ベースの報道や支援のあり方に疑問を感じ、センターでは2年前から全国に出向いてパネル展示を開始。同じ被災地である熊本に出向いた際は、来場者から「被災地として学ぶことが多い。これからに活かしたい」と声を掛けられた。

自分たちの事業が誰かのためになっていると実感する一方で、障害者や福祉職員の被災体験については知られていないことも多い。津波の存在が感覚的に分かりづらい視覚障害者は、「家が流されている」という言葉で初めて津波の存在を知ったり、避難場所では、周囲の状況が分かりづらく、役に立てない自分に憤りを感じた。また、福祉職員は職務を全うするため、自らの家族と数日間連絡を取れず、精神的な負担を追った人もいた。「こんなことがあったんですね。初めて知りました」。全国に赴くなかで、そうした来場者の声に大久さんは複雑な心境を語る。
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文・写真=丸山裕理

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