レアル久保建英、発言録からにじみ出るプロとしての「覚悟」

久保建英(Alex Livesey / Getty Images)


FC東京に復帰した今シーズン。王者・川崎フロンターレとの開幕戦で右MFの先発を射止め、圧巻のプレーを発揮した直後に久保はこんな言葉を残している。元日本代表DF車屋紳太郎との激しい肉弾戦を制し、ボールを奪い取った場面を聞かれると、一転してちょっと困惑した表情を浮かべた。

「何て言うんですかね……他の選手たちもああやって体を張って守っていますし、変な目で自分を見ることなく、普通にボールを取った、というくらいに思っていただければ幸いです」

クラブの練習以外に、プロトレーナーの木場克己氏に師事して体幹トレーニングを積み重ねてきた。栄養士の助言を受けながら食事を作ってくれる母親へ、感謝の思いを語ったこともある。午後9時には就寝するストイックな生活を含めて、取り組んできたすべてが今シーズンに入って花開いた。

サッカー選手が現役でプレーできる時間はそれほど長くない。心技体が最高潮のハーモニーを奏でる時期も限られるし、激しいコンタクトが避けられないがゆえに、なかには不慮のけがで輝きを失う選手も少なくない。だからなのか、久保はこんな覚悟を語ったことがある。

「身体的にもそういうことがあるかもしれないので、いまはサッカーができる喜びをかみしめながら、一日一日を、目の前の試合を大切にできればと思っています」

久保が言及した「そういうこと」とは、要は大けがを指す。明日に何が起こるかわからないからこそ、貪欲に結果を求め続ける。今シーズンのプレーが森保一監督に評価されて、日本代表に大抜擢された6月のキリンチャレンジカップ。愛知県内で合宿中だった4日に、久保は18歳になった。

「ひとつ年を取った、という言い方は変ですけど、これからはジュニアと書かれることはなくなりますし、世界でも18歳はもう若くはない、みたいな感じになってきている。18歳でも試合に出る選手は出ますし、だからと言って22、23歳になったときに約束されていることは何もないので」

こう語った久保とFC東京の契約は、実は18度目の誕生日をもって満了していた。つまり、歴代で2位の若さとなる18歳5日でデビューした、9日のエルサルバドル代表戦では所属クラブのない状態で、試合会場のひとめぼれスタジアム宮城のピッチに立っていたことになる。
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文=藤江直人

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