レアル久保建英、発言録からにじみ出るプロとしての「覚悟」

久保建英(Alex Livesey / Getty Images)

脳裏に浮かんださまざまな思いを、当意即妙にして臨機応変に言葉へ変換し続ける。世界一のビッグクラブ、レアル・マドリードの一員として新たなチャレンジをスタートさせた久保建英に脈打つ最大の武器は、18歳とは思えない豊富な語彙力と言っていい。日本で所属したFC東京、そして横浜F・マリノスで残した語録をあらためて振り返ってみると、ピッチ上で魅せる創造性と意外性があふれるプレーの源泉になる、頭の回転力の速さが伝わってくる。(前編はこちらから


もう子どもじゃないと、心のなかで叫び続けてきたのだろう。時間にしてわずか数秒の言葉に、プロとしての矜恃が込められていた。試合後の囲み取材を終え、帰りのバスに乗り込もうと出口へ歩み出していた久保建英が突然きびすを返し、メディアの前に歩み寄ってきた。

「久保くんではなくて、これからは久保建英でお願いします」

ゴールの余韻の残るいまならば言ってもいい、と自らを思い立たせたのか。2018年8月26日。場所はヴィッセル神戸のホーム、ノエビアスタジアム神戸。横浜F・マリノスの一員としてJ1初先発を果たした明治安田生命J1リーグ第24節の後半11分に、久保は待望のJ1初ゴールを決めていた。

神戸にはFCバルセロナで一時代を築いた、元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタがいた。偉大なレジェンドの目の前で、バルセロナの下部組織で心技体を磨き、帰国後も「バルセロナ帰り」という肩書きとともに注目を浴びてきた久保が、キャリアに残るメモリアルな一撃を決めた。

「イニエスタ選手は長年バルセロナのトップチームでプレーしてこられて、自分はちょっと下部組織をかじったくらいなので、元バルセロナ対決と言われても何かおこがましいというか、自分とは天と地ほどの差があると思っているので。その差を今日のゴールで1ミリでも埋められたら、自分にとってプラスになるのかな、と思っています」

17歳2か月22日で決めたゴールは、J1歴代2位の年少記録となる。快挙に沸き立つ周囲を諫めるように冷静沈着な言葉を紡ぎ続けた久保は、自らの意思でプレー環境を変えたばかりだった。FC東京からマリノスへの期限付き移籍が決まった、わずか10日前の8月16日だった。
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文=藤江直人

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