ビジネス

2019.07.07

「吉本興業はNPO法人になった方がいい」会長が語った胸中

調印式でスピーチする大﨑会長


「疑似家族としてもう少し方法を見つけないと」

競争が嫌いだった子供時代、落ちこぼれの自分を救った芸人たち、そして大切な人たちの死━━━━。大﨑を形作るエピソードがポロポロとその口からこぼれ落ちた。「あと、もうちょっとです」とスタッフに告げられ、私はどうしても聞きたかった「闇営業」についてどう考えているか聞いた。すると、彼はまっすぐに私に答えを投げかけた。少し長くなるが、彼の言葉をそのまま伝える。

「吉本興業はエージェントなんですよね。それぞれ芸人が個人事業主で、我々はエージェントとしていろんな仕事をとってきて、ケースバイケースでパーセンテージを決めて配分しています。個人事業主の彼らの人生なので、辞めるも辞めないも、その仕事をやるもやらないも、彼ら彼女らが決めたらいいと思うんですよ」

「結婚式の司会とかどっかの社長さんのパーティーとか、頼まれたら全然行ったらいいと思うし、会社としてOKやでっていうわけにはいかないけど、でもそれは行ったらいいんじゃないかって思ってます。それは彼らに言ってます。でもそこにはリスクがあるので、事前に言ってくれたら反社チェックして『行くな』というだけのことなんですけどね。それを聞いた限りは会社を通さなきゃいけないし、かと言って明確に線引きはできないし」

「会社とそれぞれの芸人たち、マネージャーとの信頼性みたいなことをどうにかする方法はまだあったんじゃないかと思いますけどね。この仕事はやらなくていいんじゃないかとか、そっちへ行ったら危ないよっていうのは、疑似家族や仲間としてもう少し言える方法を見つけないといけないなって思います」

「明確に線引きはできない」、「疑似家族」。これらの言葉には大﨑の仕事への考え方が詰まっているようだった。数字で測れない競争、勝ち負けで測れない笑い、好き嫌いで割り切れない人間関係、彼の見てきた世界は白黒ではっきり分けられないことが多かった。しかし、ここまで「闇営業」問題が大きくなっている中で、彼はどのような方針をとるのだろうか。事務所とタレントの関係性を見直し、より管理体制を強めるべきなのだろうか。

「悩ましいところですけど」と前置きを入れながら、「自由度はそのままあげときたい」とはっきりとした口調で語った。あくまで判断をするのは個人だという。しかし、本当にそのままでいいのだろうか。率直な疑問をぶつけた。
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写真=吉本興業

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