さらにコメの問題もあった。20世紀のアメリカのコメはカリフォルニアのインディカ米が主流で、ほとんどが長粒種で粘り気がなくパサパサしており、独特の匂いもあった。主にチャーハンやピラフ、ジャンバラヤなど、おかずと混ぜて調理する食事に使われてきた。
ところが、いまはアメリカ人もインディカ米よりジャポニカ米のほうが美味しいと思うようになり、アジア系のスーパーだけでなく、アメリカ人向けの普通のスーパーでも、ジャポニカ米が売られている。
品種改良が進み、ミシシッピ川流域の水のおいしい生産地が開発されるなどし、アメリカ産の「コシヒカリ」や「あきたこまち」が簡単に買えるようになった。また「かがやき」「ひとめぼれ」「あきたおとめ」などのブランド名も、在米日本人にはとてもなじみが深いが、日本の高級米と比較しても劣らない味だ。
ポップコーンにふりかけよ!
そして、ふりかけの登場である。これまでもアメリカでふりかけは売られていたが、あくまでアジア系のスーパーが主だった。しかし、WSJのジェーン・ブラック記者は、食欲がぐっと増進するとして、「単純な味の白米が、ふりかけるだけでSomething extraordinary(なにかスゴイもの)にtransform(変化)する」とふりかけを絶賛している。
なるほど、ふりかけるだけで瞬時に味が変わるというのは、言われてみれば時間と手間をいかに減らすかにこだわるアメリカ人には魔法の副食物だ。さらに、日本のふりかけ文化では多彩な味を選べる楽しさがあるとして、アメリカ人の食卓を変えるとも予言している。
さらに、これはアメリカ流だが、カリフラワーやナスとあわせた蒸し野菜にかけるレシピや、オートミールにふりかけて半茹でのたまごと刻んだ分葱(わけぎ)を載せるレシピも記事には躍る。極めつけはポップコーンにふりかけろ、とまである。
想像力がたくましくなり、やがて本家の意図を超えていくのがアメリカの食の文化だ。日本食がいろいろにアレンジされて、メニューのすそ野が広がり、ファン層が厚くなることで、伝統的な日本食も新しいマーケットを開拓するという相乗効果を生んでいくはずだ。
こうなってくると、次は、お茶漬け、ちらし寿司、佃煮……と、どんどん進出していきそうだ。ふりかけはお弁当のお供で、子供の頃はその時代のキャラクターが描かれた個装も楽しみのひとつだった。こうしているあいだにも、「アベンジャーズふりかけ」を誰かが開発しているかもしれない。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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