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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

各界のCEOが読むべき一冊をすすめる本誌の連載「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、ガラパゴス代表取締役社長の中平健太が、年間100冊の読書から選んだ『後世への最大遺物』を紹介する。

「成功するはずだ」。そんな期待のもとに立ち上げた事業の大半はうまくいかず、資金力のある大企業でも、新規事業の成功率は5%程度。20回に1回しか成功しないと言われています。

僕が本書を読んだ3、4年前、期待していた事業が思うほど伸びず、加えて、話題豊富で、人を引き付ける優れた経営者と自分を比べて、少し焦りも感じていました。

当時はまだ33歳。経営者としての経験は、何年もかけて積み上げていくしかありません。そこで僕は、実務をこなしながら、同時に、他人の人生を疑似体験できる読書を通じて、少しでも多くの引き出しを作るために、年間100冊近い本を読むようになったのです。

本書は、著者が33歳の頃に、若いキリスト教徒たちに向けて行った講演をまとめたものです。彼は、「人は後世に貢献するべき」だと述べ、後世に残すべきもののひとつに、まず「お金」をあげました。しかし、彼は「お金は貯める力と使う力が共存せねばならず、そもそも自分にはお金を貯める能力がない」と、二番目に「事業」をあげました。その事業に関しても「橋や道路を作ることは素晴らしいが、誰もが残せるものではない」と否定。三番目の「思想」に対しても、「われわれ平凡なものでは難しい」と話しました。

では、僕たちが後世に残せるものは何でしょうか。著者は、四番目に「勇ましく高尚なる生涯」をあげ、「いかに生きたかという生き様を残すことが、後世の人々に勇気や希望を与えるだろう」と、その理由をあげました。

繰り返しになりますが、著者がこの講演を行ったのは、33歳。本を読んでいた僕と同じ年です。自分がここまで考えられているのかを顧みるとともに、「勇ましく高尚なる生涯」が、祖父の人生に重なりました。

僕の祖父は、国交省で勤め上げた後、公園財団の理事として、昭和記念公園をはじめ、数々の公園を日本全国に造り、急速に都市化が進んだ日本人の生活環境を整えるために尽力しました。祖父も、多額のお金や親族が引き継ぐ事業を残したわけではなく、思想や文学でもない、たくさんの美しい公園を後世に残しました。そして、その公園以上に、祖父が生きていた姿が僕の記憶に、そしてDNAに刻まれています。著者はこれを「後世に残すべき、勇ましく高尚なる生涯」だと言ったのでしょう。

「勇ましく高尚な生涯を生きた祖父の遺伝子を受け継いだ僕は、きっと素晴らしいもの生み出せる起業家であるはずだ」。本書を読んだことで、自分の中に眠る確かなものを感じることができたように思います。


中平健太(なかひら・けんた)◎1981年生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、新卒でインクスに入社。2009年にガラパゴスを創業。「デザインを空気のように当たり前に、AIを使って」をビジョンに、デザイナーのAI「AIR Design」の開発、運営を行う。

構成=内田まさみ

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