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Forbes JAPAN Web編集部


これはアスリートの場合も同じで、彼らのように一芸に秀でたスペシャリストと言われる人たちは、ともするとひたすら技を磨くことだけに集中しがち。狭い世界に閉じこもってしまうので、せっかく磨いた技でチャンピオンになったとしても、人も人気もお金もついてこなくて、結局競技自体が続けられなくなってしまったりすることがありますね。

コシノ:なるほど。でも、アーティストの場合は、創作の段階から「売れよう」「認められよう」という気持ちでつくると、うまくいかないことが多いのではないかしら。

アーティストとは、突き詰めていくと結局「その人自身」ということになるのよね。言葉にするなら、誰もやっていないことをやって、新しい価値を生むことができる人のこと。

そういう意味では、武井さんもアーティストだと思いますよ。「百獣の王」ですか。あれはもう発想がアートよね。そんなこと考える人いないもの。

武井:コシノさんにそう言っていただけるなんて嬉しすぎます(笑)。

コシノ:私がいちばん影響を受けたのは、セザールというアーティストです。自転車やスチールの廃材をコンプレッションして固めた作品が有名ですが、ぐしゃっと自転車をぶつければ、同じような形のものができるでしょう。でも、それではただのコピーなの。それを最初に思いついてやった人こそがアーティストと呼ばれるべきなんです。

武井:まったく見向きもされなかった廃材に、アートとして新たな価値づけをしたわけですね。

コシノ:そのとおり。さらに彼は、日本に遊びに来たときに「お土産も何も持ってこなかったから、作品をプレゼントしたい」と言って、キャンバスもないのにどうするのかと思ったら、お菓子の箱の裏にまず鉛筆で細かくキャンバスを描いたんです。そのキャンバスの上に絵を描いた。自分でキャンバスをつくってしまったのね。

そうやって「無から有」の価値を生み出せる、それがアーティストの存在意義だと思う。そういう彼に私も影響を受けました。

アートもデザインも一緒。「壁をつくらない」生き方



──デザイナーとしてだけでなく、ホテルに飾るための油絵や、花火のプロデュースなど、アーティストの顔も持つコシノさん。「アート」と「デザイン」の違いをどうとらえていらっしゃいますか?

コシノ:一緒ですね。そういった壁をつくらないのが私の生き方です。ここまではアート、ここからはデザイン、これは商売、これは趣味なんて、決めることはナンセンスだと思う。

武井:僕も先生には及びませんが、完全に同意します。

文・構成=松崎美和子 写真=帆足宗洋

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