異なる投資対象それぞれの、長期の年平均収益率を割り出すのは簡単だ。ポートフォリオを作成するときにはそれらに基づき、目指す収益率を実現するための資産配分を決定することができる。
ただし、年平均収益率によって分かるのは、そのような配分で投資した場合に過去にはどのくらいのリターンが得られていたか、または将来的にどの程度のリターンが見込めるのかということだけだ。実際の収益、特に向こう数年間に得られる収益を教えてくれるものではない。
どの期間、またはどのインデックスでみるかによっても異なるが、米国株の収益率は、長期的には平均9~10%となっている。だが、1年という期間でみれば、大半の年はこれを大幅に上回るか、あるいは下回るかのどちらかだ。そして、このリターンの変動性が、退職後の生活設計を危険にさらす原因だ。
まだ定年退職していない人でも、退職の日まで5年を切っているなら、弱気市場は計画に打撃を与える。見込んでいただけのリターンを得られるのが、予想したよりも遅い時期になるからだ。また、退職してから5年以内に相場が弱気になった場合も、計画を維持することができなくなる。
事前の対策が不可欠
老後計画が直面するリスクに対応するための方法は、いくつかある。まず重要なのは、定年退職する前に、自分自身の計画の「ストレステスト」を行ってみることだ。
ほとんどの人の計画は、将来が予想どおりだった場合の結果を反映している。だが、その中には、市場が弱気になった場合に自分の貯蓄がどうなるかについての予想も含めておく必要がある。
市場がどの程度まで弱気になっても、あるいは弱気市場がどのくらい続いても、支出に関する計画を変更せずにいられるだろうか?また、市場が弱気ならなかったとしても、リターンが平均を下回る期間がどれだけ長引けば、変更が必要になるだろうか?