日本のレースカー、あるいは日本の技術を積んだマシンが、24時間以内にオーストリア、アメリカ、そしてタイの3レースで優勝していたのだ。翌朝、フェイスブックやメッセンジャーでは、日本の自動車業界の同僚やクルマ好きの友人が大いに盛り上がっていた。果たして、こんな記録的な一日はあっただろうか?
F1のオーストリア戦でレッドブル・ホンダが勝って、米ニューヨークにあるワットキンス・グレン・サーキットでマツダが初優勝し、タイで開催されたスーパーGTの300クラスで、日産GT-Rがドイツ勢を抑えて1−2フィニッシュ。これまでの日本のレース界に、こんなに実り多い週末はなかったのではないかと思う。
中でもダントツ1番に注目されたのは、ホンダが13年ぶりにF1で優勝したことだ。オーストリアのレッドブル・リンクで、レッドブル・ホンダ F1のエース、マックス・フェルスタッペン選手が、スタートこそ失敗したが終盤から追い上げ、フィニッシュから数分前にフェラーリF1のルクレール選手を交わし、初優勝を飾った。
フェルスタッペン選手がヘアピン・コーナーの立ち上がりでルクレール選手に当たったことは議論を呼んだけれど、幸いペナルティを受けずに「レーシング・インシデント」として認められた。
しかし、ここまでの道のりは楽ではなかった。ホンダBARチームのジェンソン・バトン選手がホンダのエンジンで最後に勝ったのは2006年のこと。その後2009年に、良い結果が出ずに撤退。2015年はにマクラーレンとタイアップしてエンジンを供給したが、2018年に同社と別れるまで、上位陣と競争できず、各方面から「ホンダの栄光は終わった」などと批判された。
2018年にトロロッソF1とタイアップしたら、少しずつ結果がついてきた。それが今年、レッドブルF1チームにパワーユニット(ハイブリッド・エンジン)を供給し始めると、知らぬ間にトップ争いに食い込んでいた。そして2019年6月30日、13年ぶりに優勝。30年前のF1で3回もチャンピオンを獲得したホンダは、ついにプライドを取り戻した。
この勝利は日本の自動車業界、レース界、そしてホンダにとってどれだけ重要な出来事かというと、ホンダが7月4日の日本経済新聞に全面広告を載せるほど。「数えきれない悔しさが、私たちを強くした」という短い文章からは、ホンダの悔しさや痛みが伝わってくる。これからさらに、メルセデスやフェラーリとトップ争いしていくことを期待したい。