ビジネス

2019.07.12

取締役の訴訟リスクに対応する「会社役員賠償責任保険(D&O保険)」とは

Tetra Images / Getty Images


D&O保険の補償内容

そんな中、役員が積極的なリスクテイクと健全な経営を目指す際に会社として視野に入れておきたいものに、会社役員賠償責任保険(D&O保険)があります。役員としての業務遂行に起因して損害賠償請求をされた際の損害を補償する仕組みで、欧米から入ってきた保険です。

D&O保険はDirectors and Officers Liability Insuranceの略で、Directorは取締役、Officerは主に執行役や執行役員を指すため、日本語では「会社役員賠償責任保険」と呼ばれています。

2017年に東京海上日動火災保険が1200社(うち約160社が東証一部上場企業)を対象に実施した「会社役員賠償責任保険(D&O保険)の加入実態等に関する調査結果」によると、役員のD&O保険の認知度は約6割でした。

図表3は、D&O保険の主な補償内容の例です。以前は「役員に関する補償」の保険料のうち、株主代表訴訟敗訴時等相当保険料は役員の個人負担とするのが通常でしたが、現在は、取締役会決議など一定の手続きを経れば、それを含めて保険料を全額会社が負担することも可能とされています。


※東京海上日動「D&Oマネジメントパッケージ(https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/baiseki/yakuin/)」の例
取材内容をもとに筆者作成
※補償内容は保険会社によって異なる


役員の責任が重くなる動きは待ったなしのため、D&O保険による手当ても視野に入れておく重要性が高まっています。今後予定されている会社法改正では、D&O保険を締結している事実を事業報告書へ明記する等の規律が新設される見込みで、今後は認知度も上がり存在感を増しそうです。優秀な人材を社外取締役として招致し、積極的なリスクテイクと健全な経営を目指す上での有効な1ツールとして、経営者はD&O保険を心にとめておいていただけたらと思います。

文=竹下さくら

ForbesBrandVoice

人気記事