「自由と規律」の国、英国への旅立ち グローバルリーダー育成に適した文化

写真=田崎忠良

私が渡英する決心をしたもう一つの大きな理由に、1949年に発行されたイギリス文学者池田潔氏の「『自由と規律』イギリスの学校生活」という本との出会いがあります。

「自由と規律」は、自ら勉強に対する姿勢を律し、その上で自由な発想で自らを磨くという英国パブリックスクールの教育理念です。パブリックスクールは、教科書に沿って全員が同じ内容の教育を受ける日本のシステムとは異なり、教科書を使わずに各々が自ら将来目指す方向に沿った教育を受け、自由の精神が厳格な規律の中で見事に育まれていくという環境が整っており、この英国の教育システムに感銘を受け、英国に行く決心が固まったのです。

少し話が逸れますが、英国の憲法には常識と考えられることは明文化されていないのです。物事の考え方は時代と共に変化していくし、都度臨機応変に対応していけばいい。憲法は基本常識であって、それを明文化すると人によって解釈が異なったり、ややこしくなるから書かないほうがいい、という考えに基づいているそうです。私は、これこそがまさしく「自由と規律」であり、英国人の性格形成の基礎となっているのだと思うのです。いわゆる、常識的にやってはいけないことはある。でも、自由にやるには責任が伴う、ということです。私は、英国の憲法や人々にこのような柔軟さがあるのは、パブリックスクールの道徳観でもあるノブレスオブリージュ(高貴な人には、それにふさわしい責務を果たす義務がある)が根底にあるのだと解釈しています。

私が経営する会社、ジェイエイシーリクルートメントでは経営理念に自由と規律(Freedom & Discipline)を掲げています。これには、全社員が自らを厳しく律して、常に高い志を持って自由な発想で行動して欲しいという意味が込められています。

自身を律することで、規律に繋がる。規律を守ることで、自由を得ることができる。この理念は教育やビジネスだけでなく、すべての物事の根本だと思うのです。

英国への旅立ち

私が都立西高校に通っていた頃の成績は、ぎりぎり東大に入れる程度でした。数学は得意でしたが、国語と漢文は苦手で平均点に何とか届く程度。そのため、東大のイギリス人教授に「数学を生かして留学する方法はないか」と聞いたら、数学、高等数学(高いレベルの数学)、物理 の3科目だけで行ける大学もあることを教えてもらいました。それなら自分でも英国の大学に行けると思い、渡英の準備を本格的に始めたのです。
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文=田崎忠良

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