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2019.07.24

地方xインバウンド観光の可能性 体験重視の「コト消費」が主流に

宮崎県新富町の宿泊施設、茶心(ちゃしん)

日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日外客数は、3119万人(前年比8.7%増)。日本政府観光局がが統計を取り始めた1964年以降で過去最高をマークしています。2014年が1341万人であったことを考えると、ここ5年で2倍以上増加していることになります。2019年2月の最新のデータも、前年2月を上回る数字をマークしており、インバウンド観光客は今後も増加傾向にあるようです。

一方、国連世界観光機関(2017年)によると、観光立国フランスを訪れているお客様は8691万人で1位。2位のスペインも8178万人。対する日本は2869万人の14位。EU内ではビザや入国審査なく移動がしやすい事や観光資源の多様性や、交通インフラのといった点で先進観光国とは差がありますが、これを「伸びしろ」と捉えれば成長の可能性は大いに開けます。


地域らしさを表現する宿をつくろうー23畳の瞑想ルームがあるお茶ホテル

かつては「通り過ぎる町」と揶揄されるほど、観光の目玉やめぼしい特産品がなかった宮崎県新富町。第1回で紹介した通り、そんな町にも約20年前から大切に育てられてきたライチがあり、1粒1000円の「新富ライチ」としてブランド化したことから、多くの人に認知されるようになりました。

その町が次に仕掛けようとしているのが、宿泊施設です。インバウンド観光客を主たるお客様として想定していて、「お茶の心を体感する」をコンセプトとし、名前も「茶心(ちゃしん)」としています。

「茶心」があるのは、新富町の丘陵地帯。一帯は、全国茶品評会で受賞歴のある日本茶専門店が点在しているお茶どころです。あまり印象をお持ちでないかもしれませんが、実は宮崎県の荒茶生産量は全国4位(平成30年産/農林水産省)で、新富町でも十数戸の茶農家が代々お茶の生産に取り組んでいます。

「茶心」のコンセプトは、そうした地域の特色や伝統から生まれました。建物は地元の名士が築いた立派な日本家屋で、瞑想に最適な23畳の和室があったり、リビングでは町内の優れたお茶を試飲できたりと、「侘び寂び」に代表される日本の伝統文化を体感することができます。一方で、インテリアには中国で人気を博している無印良品の製品を採用したり、BGMや照明のコントロールにAmazonのスマートスピーカーを用いたりするなど、革新的な要素も同居しています。


サンセバスチャン通り
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文=齋藤潤一

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